「カラーマネージメントの原理」で記述したように、ICCプロファイルを使用したカラーマネージメントは、
RGB(CMYK) -> Lab (マッピング) Lab -> RGB(CMYK)
のような流れで行われます。 RGB(CMYK) は一旦Labに変換されますが、マッピングの機能により、出力プロファイルを参照してそれに近いLabが選択され、そのLabに対応するRGB(CMYK)にもどされ、モニタの制御に使用されたり、プリンタのインクやトナー量の制御に使用されたりします。
このような機能を働かす具体的な場所・方法としては大きく次の3種類があります。
・PC(Mac)にインストールされたアプリケーションソフトが行う、
・オペレーティングシステムがプリンタドライバの指示に従って行う、
・ 汎用の装置(モニタやプリンタなど)が装置内部で行う、
最近では、PCのメーカ(MicrosoftやApple)も、アプリケーションのメーカ(Adobeなど)も、モニタやプリンタメーカも、それぞれカラーマネージメントの重要性に気が付き、自社の技術のみでカラーマネージメントが可能になる仕組みを実装することが行われています。しかし、だからと言って複数個所で実行すると正常な色味になりませんので、それぞれの特徴を意識して選択するべきです。
なを、現在PC(Mac)を使用する上で、次のようなややこしい現実があって、そのためカラーマネージメントを難しいものと思わせる要因になっていますが、正常に動作すると、非常に有効な機能であることが実感出来ますので、十分理解したうえで使用することが重要です。
(1)プリンタドライバをインストールすると、標準でOSによるカラーマネージメントを有効にするメーカとしないメーカがある。
(2)MacはOS-9まではOSでのカラーマネージメントは有効/無効が選択出来たが、OS-X以降は基本的には、無効にできなくなった。
(3)カラーマネージメント機能のあるアプリケーションと、ないアプリケーションとがある。
(4)プリンタドライバのバージョンにより、OSでのカラーマネージメント機能が有効の場合と無効の場合がある。
(5)カラーマネージメント機能のあるアプリケーションでも、扱う画像の種類によって、カラーマネージメントが効かない場合もある。
それでは、場所の違いによる、カラーマネージメントの特徴を記述します。
・アプリケーションでカラーマネージメントを行う
Photoshop6.0以降、Illustrator9.0以降、Acrobat5.0以降、InDesign2.0以降にはカラーマネジメントの機能が組み込まれていますので、これらのアプリケーションを主として使用する場合は、アプリケーションでカラーマネージメントが可能です。
写真家の方々は、Photoshopでカラーマネージメントすることが一般的になっているようです。
しかし、よくいわれる問題点は、(1)文字など、墨(K)のみで書いた文字をプリントすると、CMYKの混色でプリントされることがある。(2)EPS形式で保存したデータを配置すると、この画像はカラーマネージメントされないことがある。
などです。
なを、カラーマネージメントは複数の場所で行うことは避けるべきであり、複数の場所でカラーマネージメントを行うと改善されるどころか悪くなる一方です。
しかし、プリンタが非PSプリンタの場合、OS−XではOSでのカラーマネージメントを止めることはできませんので、アプリケーションでカラーマネージメントを行う場合は、OSでのカラーマネージメントの効果ができるだけ少なくなるように設定する必要があります。(詳細は別途記述)
PSプリンタの場合は、Photoshop6.0以降、Illustrator9.0以降、Acrobat5.0以降、InDesign2.0以降などのAdobeのアプリケーションは、OS−X以降でもOSのカラーマネージメントを無効としていますので、「オペレーティングシステム(OS)でカラーマネージメント」されてしまう恐れはありません。Adobe社のアプリケーションの場合は、「アプリケーションでカラーマネージメントを行う」のはよい選択です。ただし配置する画像の形式に制限があります。
また、当然ですが、多人数でプリンタを共有している場合は、全員のPCにおいて、アプリケーションすべてでそのための設定をする必要があります。
・オペレーティングシステム(OS)でカラーマネージメントを行う
MacintoshのOSにはカラーマネージメント機能のモジュールとして、ColorSyncが、WindowsのOSにはImage Color
Management(ICM)が組み込まれています。
MS−Officeなど最近のRGBデータを扱うアプリケーションプログラムは、カラーマネージメントを設定する項目がありません。しかし、OSによるカラーマネージメントの機能を使用するように設計されていますので、OSのカラーマネージメントの設定にしたがって動作します。
ただし、MacもXPまでのWidowsも入力プロファイルを設定することができず、MacはGenericRGBを、WindowsはsRGBをOSで仮定しています。
したがって、RGBデータにプロファイルが埋め込まれていない場合は、扱うデータはMacの場合、GenericRGBの特性である必要があり、Windowsの場合はsRGBの特性である必要があります。プロファイル名をリネームするという裏技で、MacでもsRGBをデフォルトにする方法がありましたが、現在でも有効かは定かでありませんし、お勧めはしません。なを、Windows-Vistaは入力プロファイルのデフォルトをsRGB以外にも設定可能となりました。
通常のモニタの場合、キャリブレーションを行うと、その結果がPC(Mac)内のディスプレイコントローラのハードウェアに反映され、その反映された状態でのプロファイルも同時に作成されて、OSの中の、カラーマネージメントを制御するモジュールのメモリに設定されます。 高価なモニタでは、キャリブレーションを行う時、モニタ装置内部で閉じて行われますので、その結果をPC(Mac)内のディスプレイコントローラのハードウェアに反映させる必要がありません。そのため、PC(Mac)内のディスプレイコントローラのハードウェアはデフォルトのままの値となります。しかし、プロファイルは必要ですので作成され、OSの中の、カラーマネージメントを制御するモジュールのメモリに設定されます。 ですから、いずれにしてもモニタのプロファイルはOSに設定されることになります。
Macの場合は、すべてのアプリケーションでRGBデータを扱う場合、OSのカラーマネージメント機能が働きますので、モニタ表示でアプリケーションにより色味が変わることはありませんが、Windows XPの場合は、アプリケーションがカラーマネージメント機能を使用しているか否かによって色味が変わります。たとえば、インターネットエクスプローラはサポートしていなくて、最近のOfficeではサポートしていますので、モニタで色味が違って見えることがあります。なをWindows-Vistaでもカラーマネージメントの有効なアプリケーションとそうでないものがあります。
・汎用の装置(モニタやプリンタなど)でカラーマネージメントを行う
モニタの場合は、それ自身にカラーマネージメント機能を持ち、RGBの入力信号の特性をsRGBやAdobeRGBなどの特性に調整することが出来るものがあります。この場合は、sRGBやAdobeRGBの特性を持つデジカメのデータなどの場合は、そのままモニタで表示できます。
プリンタがPSプリンタの場合は、RIPといわれる機能があり、ここに入力プロファイルと出力プロファイルを設定することができるようになっていて、カラーマネージメントをプリンタ内部で行える機種があります。
この機能を使用する場合は、アプリケーションやOSにおいては、そのプリンタに対するカラーマネージメントを「無効」にしておかなければなりません。
具体的に「無効」にする設定方法は別途記述します。
なを、カラーマネージメントの「マッチング」機能はそのプリンタメーカの独自機能になりますので、色味がアプリケーションによる場合と同じになるとは限りません。
しかし、決定的な利点は、EPS形式の画像が配置されたIllustratorのデータでもカラーマネージメントが有効になること、及び多人数でプリンタを共有する場合プリンタ側の設定のみで、全員がその効果を利用できることです。
なを、Adobe純正のRIPを使用したプリンタの場合、ICCプロファイルではない、別のAdobeRIP独自のCSA、CRDを使うカラーマネージメントの機能も組み込まれていますが、プリンタメーカは、これの使用は推奨していない、または動作しないように制限しているようです。
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