DDCPや、プルーファとして使用されるレーザプリンタなどでは、カラーマネージメント機能として、「デバイスリンクプロファイルをサポート」等との記述がみられます。 印刷物を忠実にシミュレーションすることを目的としたプリンタでは、この「デバイスリンクプロファイル」をサポートしていることが重要です。

デバイスリンクプロファイルの特徴
「カラーマネージメントの原理」で記述したように、CMYKデータを入力とする、ポストスクリプトプリンタの場合のカラーマネージメントは、
CMYK−>Lab (マッピング) Lab−>CMYK
のように変換が行われます。「CMYK−>Lab」は入力プロファイルまたはシミュレーションプロファイルと呼ばれ、シミュレートするべき印刷機の特性を持っています。
「Lab−>CMYK」は出力プロファイルまたはデバイスプロファイルと呼ばれ、プリンタの特性をもっています。

通常のカラーマネジメントでは、この一旦Labに変換する処理方式が使用されていますが、この変換処理をよく見ると、4次元のCMYKが3次元のLabに変換され、3次元のLabが4次元のCMYKに変換(展開)されています。 元はK単色のグレーであっても、この3次元から4次元に変換するとき、CMYKの混色に変換され、これが通常のICCプロファイルによるカラーマネジメントの問題点といわれています。
CMYKデータを入力とする、ポストスクリプトプリンタの場合のカラーマネジメントは、入力がCMYKで、出力もCMYKです。それなら、実際のプリント時ではなく、あらかじめこの変換を別途行っておけば、プリント時は処理を要するLab経由の変換が不要になることが分かります。
その結果、「CMYK->CMYK」のテーブルが得られます。
これを使用した場合は、Lab変換の処理がないので処理が早くなります。これだけでも入力プロファイルと出力プロファイルがリンクされていますので、「デバイスリンクプロファイル」といえます。しかし、CMYKを直接CMYKに変換するテーブルですので、必要により、カラーマネージメントの処理で得られるCMYKの値を意識的に書き換えておくことも可能です。
たとえば、Kについては入力の値そのままを出力側の値として設定して、「K単色の場合に限りカラーマネジメントしない」なども自由にできます。そのほか、原色のCMYについても通常のカラーマネージメントでは混色となってしまいますが、混色にならないようにあらかじめ補正しておくことも可能です。

通常「デバイスリンクプロファイル」と言えば、このような処理が加えられており、通常のカラーマネジメントよりも結果的に印刷に近い色味が得られます。
しかし、良い点ばかりではなく、弱点もあります。
たとえば使用する用紙が変わった場合、通常のカラーマネジメントの場合には、出力プロファイルを取り替えるだけで対処でき、入力プロファイルは変更する必要がありません。
また、シミュレートするべき印刷機を変える場合は、別の入力プロファイルを選択すればよく、出力プロファイルは変更する必要はありません。
したがって、通常のICCプロファイルの場合は、必要とするプロファイル数は、入力プロファイルの数と出力プロファイル数の合計となります。
しかし、デバイスリンクプロファイルの場合は、入力プロファイルと出力プロファイルの組み合わせごとに一つのプロファイルとなりますので、入力プロファイルが複数あり、出力プロファイルも複数ある場合には、必要とするプロファイルの数は、入力プロファイルと出力プロファイルの積となり、その組み合わせの数だけあらかじめ作成しておく必要があります。

また、当然ですが、プリンタに「デバイスリンクプロファイル」を処理する機能が組み込まれている必要があります。

従来は「デバイスリンクプロファイル」は標準化されていなかったため、プリンタメーカごとにプロファイル作成ツールがありましたが、最近、ICCでも「デバイスリンクプロファイル」が仕様化されたため、その仕様にのっとった「デバイスリンクプロファイル」をGretagmacbeth社(現在X-Rite社)の
「ProfileMaker5」など汎用のプロファイル作成ツールでも作成出来るようになりました。
また、このICC準拠のデバイスリンクプロファイルをサポートしているプリンタとしては、(株)沖データのML910PS、C830dn、MC860dn、C844dnwなどがあります。
C844dnwにデバイスリンクプロファイルをインストールすると、雑誌広告やJapanColorの印刷の色味を完全に
シミュレート出来るのでびっくりされるデザイナーさんが多いです。

デバイスリンクプロファイルの効果の確認(Photoshop CS4以降を使用の事)
Photoshop CS4以降では「プロファイル変換」に「詳細」設定が追加されました。
「詳細」を開くと、デバイスリンクプロファイルを使用してプロファイル変換することも可能になりました。
「ダウンロード」にデバイスリンクのサンプルを置きましたので、動作確認ができます。ダウンロードして、インストール
しておいてください。
インキ総量(TAC値)の項でJapancolor2001coatedからJMPAにプロファイル変換する方法を記述しましたが、サンプルのデバイスリンクプロファイルを使用しても、Japancolor2001coatedからJMPAにプロファイル変換出来ます。
サンプルのデバイスリンクプロファイルはK100%など純粋なC、M、Y、Kは混色にならない設定で作成しましたので、画像中に文字などK100%の部分があればその値が保存されていて、混色にならないことが確認でき、通常のICCプロファイルによるカラーマネージメントとの違いが確認できます。
具体的には、Photoshop CS4以降を立ち上げ、サンプル画像をダウンロードして開きます。(プロファイルは
Japancolor2001coatedが埋め込まれています。)
スポイトツールで左下のCMYKの値がすべて純色100%であることを確認してください。
次に通常の方法でプロファイルを「JapanWebCoated.icc」に変更してください。
写真の色味はほとんど変わらないが最大濃度は321%以下に変換されていることが分かります。
またCMYKの値を確認すると、特にKの値が混色に変わっていることが確認できます。
これが通常のプロファイル変換の結果です。
次に

Photoshop CS4以降の「プロファイル変換」の「詳細」を開きます。
ダウンロードしたデバイスリンクプロファイルを「◎デバイスリンク」に設定してください。
「OK」押下によりプロファイル変換が行われます。
画像の最大濃度は320%以下に変換されていることが確認できますが、今度は純色のCMYK濃度は
プロファイル変換されていないことが確認できます。
デバイスリンクプロファイルは、今まではPSプリンタにインストールして使用するのが一般的でしたが
Photoshop CS4以降では、このような使い方もできるようになりました。

また、PhotoshopCS6からは、「プロファイル変換」のほか、「色調補正」の「カラールックアップ」でもデバイスリンクプロファイルを指定できるようになりました。ここで、「デバイスリンクプロファイル」を指定して、ファイルを保存すると、「プロファイル変換」と同じ結果になります。


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