ディスプレイのガンマは1.8がよいのか2.2がよいか、と言った議論があります。 ここでは、その背景などを記述します。

ディスプレイとディスプレイコントローラ
 パソコンの中には「ディスプレイコントローラ」と呼ばれる装置があります。デスクトップパソコンの場合には、「ディスプレイカード」等と呼ばれ、 ノートPCなどでは、PC本体の基盤と一体化されていて、物理的にその部分を見ることは出来ません。この装置は、メモリ内にある画像を取り出し、ディスプレイに対してRGB信号を送り出す機能をもっています。ディスプレイは、ケーブルを通してRGBの信号を受け取ると、それに従って画面に表示します。

ルックアップテーブル(LUT)
 MS-DOS時代に設計された「ディスプレイコントローラ」の多くは固定的にメモリ内のディジタルの値を電圧に変換する機能しかありませんでしたが、その後、「ディスプレイコントローラ」にLUT(ルックアップテーブル)が搭載されるようになりました。Macにつては、初代から搭載されていました。
 これは、入力と出力の関係を設定するテーブルです。これがあれば、ディスプレイとディスプレイカードをあわせてガンマ値を自由に変更できます。従って、たとえばWindowsマシンであってもMacと同じ色味で表示が可能になります。 

LUTの有無を確認する方法(Win):
デスクトップで右クリックし、画面のプロパティを開き、「詳細」を表示します。この後はマシン毎に操作が異なりますが、要は、「ディスプレイコントローラ」関連のプロパティがありますので、これを開きます。ここで画面全体の色味を変えることが出来るなら「ある」ことになります。一切画面の色を変更できなければ「無い」ことになります。
 デスクトップPCで、LUTが「ない」場合は、画面の色の調整はPC側ではなく、もっぱら「ディスプレイ本体の前面下にある設定ボタン」によることとなります。ノートPCでLUTが「ない」場合は色の調整は、出来ないことになります。 「ある」場合はICCプロファイル作成と同時に色の調整(キャリブレーション)も行われ、結果的に画面全体の色味が変わります。 

Adobe GammaによるICCプロファイルの作成と画面のキャリブレーション
ディスプレイを含めてカラーマネジメントする場合は、「カラーマネジメントの原理」で述べたように、ディスプレイ用のICCプロファイルを使用します。このICCプロファイルを作成する方法は、「ICCプロファイルはどのようにして作成するのか」で述べましたが、これは本格的な方法です。これとは別の簡易な方法でもディスプレイ用ICCプロファイルを作成することが可能です。
Photoshop6.0などには、「Adobe Gamma」というディスプレイの調整用ユーティリティが添付されており、標準的なインストールで、自動的にこれもインストールされます。これを使用すると、精度は落ちますが、結果的には希望するガンマ値に設定することと、そのガンマ値などの特性が反映された、ICCプロファイルが自動的に作成されます。具体的には、ディスプレイコントローラのLUTに、ある値を設定することにより、ディスプレイ単体のガンマ特性を補正して、ユーティリティで設定した「目的のガンマ値」に結果的に設定されます。

MacとWindowsで同じコンテンツの色味がなぜ異なるのか
インターネットのホームページをMacでデザインして、Windowsマシンで確認してみると、暗い印象を受けることがあります。逆にWindowsマシンでデザインすると、Macで見たとき明るすぎる印象を受けることがあります。
これは、ディスプレイのガンマの違いによるものです。現時点では、インターネットのブラウザにはカラーマネジメントの機能が無い(*1)ことと、コンテンツの画像がカラーマネジメントに対応していないためにこのようなことになるのですが、いずれはインターネットのコンテンツにもカラーマネジメントが適用されるようになれば、ガンマの違いは吸収され、この問題は解決します。ガンマを正しく理解することがカラーマネジメントを理解する上で大切です。
(*1)Mac用IE5.0以降はカラーマネジメント機能が組み込まれていていますので、カラーマネジメント対応のコンテンツの場合には、Windowsユーザと同じ色味を表示できます。

MacとWindowsでのガンマのちがい
Macは設計当初から、「プリンタの出力は、濃淡を含めて画面と一致していなければならない」と考えました。そして、現実にMacと組み合わせて使用するプリンタとしては「LaserWriter」という機種が選ばれました。この機種は中間調がやや濃くなる傾向がありました。当時はICCプロファイルによるカラーマネジメントが実用化前でしたので、濃淡を含めて画面とプリントを合わせるためには、そのプリンタに合わせてディスプレイを設計しなければ、なりませんでした。

 一般的にブラウン管タイプのディスプレイは、入力電圧に比例した明るさで発光するのではなく、入力電圧の約2.5乗に比例して発光する特性がありますので、やはり中間調は暗く(*注)表示され、LaserWriterと組み合わせて使用するには好都合だったのです。しかし、プリンタの特性はディスプレイほど極端ではなく、ディスプレイの特性としては入力電圧の1.8乗に比例する場合が一番プリンタの特性に一致したのです。そこで、Mac専用のディスプレイは、入力電圧に2.5乗ではなく1.8乗に比例するよう補正回路が組み込まれました。
このような背景から、今でもMac専用と言われるディスプレイはこのような特性が与えられています。この1.8がMacのガンマといわれる値です。(カラーになってもこの値が引き継がれています。

(*注)2.5乗なら、入力よりも出力の方が大きな値になるように思われますが、それは入力が"1"以上の場合です。ここでの「入力電圧」は0〜1の範囲の値を前提にしていますので、、入力より出力値が小さくなります。

では、Windows用ディスプレイはガンマが2.2であるといわれているのはなぜでしょう。
Windowsパソコンのハードウェアは、MS-DOS時代から引き継がれ、従来のハードウェアにOSとしてWindowsをインストールすることにより、Windowsパソコンに変身しました。したがってWindows用にディスプレイを交換する発想はありません。MS-DOS時代のディスプレイは、歴史が古いこともあり、プリンタとの親和性よりも、一般のテレビとの親和性を重視し、というよりも、テレビ用ブラウン管が流用されていました。
 先に書きましたが、ブラウン管タイプのディスプレイのガンマは2.5です。しかしこれは暗い部屋での値であり、現実にはテレビやパソコンは明るい部屋で使用します。その場合、管面にも光が当たるため中間調が入力の理論値より明るくなります。従って、印象としてはガンマが2.2程度に相当することになります。
LCDではこのような2.5乗のような特性は本来はありませんが、CRTとの置き換えを考慮して、わざわざこの特性を持たせているとのことです。

テレビの場合
テレビのブラウン管のガンマ値が約2.2であるわりには、通常テレビの画像に違和感はありません。その訳はテレビカメラ側で「ガンマ=0.45」なる補正を行って中間調を持ち上げているからです。
2.2x0.45が0.99で分かる通り、この補正でガンマ=約1となり正常に見えることになります。

パソコンの場合(カラーマネジメントのない環境で)
では、テレビのディスプレイと同じガンマ値(2.2)を持つWindowsパソコン用ディスプレイを、Windowsパソコンに接続したとき、正しい画像が表示できているのでしょうか。
 デジカメの多くの写真は違和感なく表示出来ています。 理由は、デジカメもカメラ内部で、テレビカメラと同様に「ガンマ=0.45」なる補正を行っているからです。デジカメのカタログには、sRGBの特性であるとの表示があることがありますが、このカメラのsRGBという特性は、表示する装置がガンマ=2.2のとき正しい色味となるような特性(ガンマ=0.45)です。 
一般に、sRGBのガンマは2.2と言われていいます。 表示装置はそのとおりですが、入力装置の特性がsRGBの場合は、ガンマは、その逆数の0.45ということになります。

Macの場合は、通常ガンマ=1.8ですから、カラーマネージメントしない環境では、sRGB特性のデータを開くと、明るめに表示されます。しかし、最近のMacユーザはほとんどOS-Xに移行されましたので、そのユーザ環境では無意識にカラーマネージメントが動作し、結果的に正しい色味で表示されています。

なを、PhotoshopなどAdobeのアプリケーションの場合は、カラーマネージメントが動作しますので、モニタのガンマが1.8であってもsRGBデータを正しい色味で表示することが可能です。

要するに、カラーマネージメントの処理が入る場合は、入力データの特性は入力プロファイルによってLabに変換されるので、ガンマの概念がなくなります。したがって、ディスプレイのガンマはいくつでもよく、ガンマ値がディスプレイのICCプロファイルに正しく反映されていればよいことになります。

このホームページでは、カラーマネージメントをお勧めしているので、カラーマネージメントを前提とする限り、ディスプレイのガンマはどちらでもよいということになります。

Mac OS X v10.6 のガンマについて
 カラーマネージメントが一般的になる前は、データのRGBの値が直接ディスプレイに与えられるため、ディスプレイのガンマとデータの特性(ガンマ)が一致していないと違和感がありました。
具体的には、sRGBの特性(ガンマ1/2.2)を持ったデジカメのデータは、ディスプレイのガンマが2.2のWindowsでは正しく表示できますが、ディスプレイのガンマが1.8のMacでは正しく表示できません。
逆に、GenericRGBの特性(ガンマ1/1.8)を持った、素材集などのCD−ROMの表示では、Macで正しく表示できますが、Windowsでは正しく表示できません。

OS-X以降、Macはカラーマネージメントがデフォルトで動作するようになりましたので、ディスプレイのガンマはディスプレイのプロファイルに反映されて、その結果ディスプレイのガンマは問わなくなりましたが、Macは依然として、GenericRGBの特性(ガンマ1/1.8)を持ったデータが正しく表示できるように、デフォルトの入力プロファイルとして、GenericRGBを設定していました。

OS−X のv10.6以降はデフォルトの入力プロファイルをWindowsと同じsRGB(ガンマ2.2)に変更したようです。したがって、ディスプレイ本体のガンマが1.8であっても、Windowsと同じ色味で表示されるようになります。これは、単にデフォルトを変更しただけですので、入力プロファイルを元のGenericRGBに戻せば従来通りの色味とすることは可能です。

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