ガモット(ガマット)
 モニタで見えている鮮やかな色味が、プリンタで紙にプリントすると、くすんで見えるので何とかならないか、と思うことがあります。
プリンタの設定を誤っている場合は論外ですが、正しく設定していても、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4色のみでプリントするタイプのプリンタでは、表現できる範囲がモニタよりも狭いのでモニタと同じようにプリントすることはできません。

それでは、モニタとプリンタではどのように表現できる範囲が違うのかを見てみます。モニタはsRGBの特性のもの、プリンタはJapancolor 2001coatedの特性を持っていると仮定します。
 
sRGBのガモット
 


Japancolor2001coatedのガモット

どちらの図も、表現できる範囲をLabで表す立体です。 緑から赤の軸がa軸で、青から黄色の軸がb軸で、縦の軸がL軸です。
左の立体図は、sRGBの特性を持つ装置に、RGB=0、0、0から255、255、255を与えた時に対応するLabの値を立体であらわしたもので、右はJapancolor2001 coatedの特性を持つ装置にCMYK=0、0、0、0%から100、100、100、100%を与えた時に対応するLabの値を立体で示したものです。
(立体の色は特に意味はありません。横方向のふくらみと縦方向の長さと位置に注目してください)
比較すると、右の立体の方が小さいです。したがって、右の方が色域が狭いことがわかります。ということは、CMYKをどのように選択しても、sRGBで表示できるLabを表現できない領域がある、ということがわかります。(スケールは同じです)
装置ごとに表現できる色域は異なり、この装置に固有の色域(カラースペース)を特に「ガモット(ガマット)」と言います。

デジカメで撮影した、sRGB特性のデータを、たとえばJapancolor2001coatedの特性を持ったプリンタでプリントする場合、ガモット(ガマット)が異なるのですから、何らかの方法で狭いガモット(ガマット)に対応させなければなりません。この対応させる処理を「ガモット(ガマット)マッピング」といいます。大きさの異なるものを対応させる方法としては、「知覚的、彩度、相対的、絶対的」の4種類の方法がInternational Color Consortiumで仕様化されています。

代表的なプロファイルのガモット(ガマット)を、各方向から表示したものを次に示します。
sRGB

AdobeRGB

JapanColor2001Coated

JapanWebCoated(JMPA)

ガモット(ガマット)はこのように体積で表現されるべきですが、Labで表現される立体(図Lab)を真上から見ると、a軸とb軸からなる平面が見え、Lab立体におけるa、bの最大値(外周)が投影されます。 それを図abに示します。 また、この画像を計算式を使用してxyに変換したものを図xyに示します。
歴史的には、先にxy座標で表現することが行われていましたが、人間が知覚する色差が、色空間内の等しい距離に対応していなかったので、それを修正したものがLabで表現する方式で、1976年にCIE(国際照明委員会)により制定されました。
図Lab

図ab

図xy

これらは、異なる3種類の座標系で同じガモット(ガマット)を表示したものです。いずれも黄色はAdobeRGBのガモット(ガマット)であり、青色はJapancolor 2001coatedのガモット(ガマット)です。どの座標系で表現しても、AdobeRGBの方がガモット(ガマット)が広いことがわかります。

特色のモニタ表示とプリント結果について

 一例ですが、特色のDIC636をモニタで表示すると、カラーチップに近い色味で表示されているのに、プリントすると、くすんでプリントされる、という申告を受けることがあります。



(1)画面とプリントで色が違う原因
プリンタとモニタでは表現出来る色の範囲が異なっており、一般にモニタの方が広い色域を持っていることを「ガモット(ガマット)」の説明のところで記述しました。

上図に標準的な印刷機(DIC)と最近のDTP向けモニタ(AdobeRGB)とインクジェットプリンタの表現出来る色域を示します。なを、通常トナー方式のプリンタ(沖データのMLPro9800PSなど)の色域はほぼ印刷機(DIC)と同様です。 この色域の重なる範囲(内側)のLab値を持つ色は、ほぼ同じ色で表現できますが、重なりの外の色は同じ色で表現することは出来ません。

(2) DIC636の場合
今回説明に使用する、DIC636の絶対的な色はLab=66、51、84(カラーチップの実測値)という値であり、上図中では○印の位置にあります。
従って、モニタでも表現出来るぎりぎりの色であることが分かります。この色は上図で明らかなように、印刷機(プリンタ)の表現範囲外です。そこで、このような色を印刷する場合、やむをえず表現出来るぎりぎりの色(図中の●点)に置き換えられて印刷(プリント)されます。このため画面と異なった色味になってしまいます。
一例として、あるインクジェットプリンタの色域も図中に示しましたが、6色〜8色使用の、インクジェットプリンタでは印刷機より色域が広いため画面に近い色味を表現可能です。しかし、完全にはDIC636を表現できないことが分かります。

(3)DIC636P*について
IllustratorやPhotoshopでDICの特色を指定すると、DIC636P*のように(*)が添えられた特色名があります。この(*)は「4色のプロセスインキの組み合わせでは、表現できない」という意味で、(***)のように(*)が多いほど色味が異なり、(*)の無い場合は近い色を表現出来ることを示します。
プロセスインキの場合どのような色になるのか、をあらかじめ確認するためのチャートとして「プロセスカラーガイド」が販売されていました。
DICのインキ用ですが、トナーを使用したプリンタの場合もほぼ同じ色味になります。プロセスカラーガイドの詳細は、下記にありますが、2009年3月に販売中止になったようです。
http://www.dic.co.jp/products/cguide/cguide.html



(TOPページに戻る)