微生物の殺菌にかんするF値で悩む学生諸君がよく迷い込んでくるから、F値の説明をサービスね。計算方法だけ。
数値は法改正される恐れがあるから自分で調べてね。試験で間違っても責任を負いかねます。
<定義>
D値、Z値とは、対象の菌に固有の耐熱性の指標です。
このページ内での定義:
ある温度 T (℃)一定の条件で殺菌します。最初の菌数を no 、 t 秒間の殺菌後に生存した菌数を n とします。
D値: 最初の菌数を1/10にする時間です。(通常は秒で計ることが多い) Z値: D値を1/10にする温度差(℃)です。
F値はレトルト食品の殺菌強度を規定するもので、 121 ℃、1分 をF値=1と定義。 |
120℃で4分間の規定のようですが、指導する担当官の意地悪に会わないようにするため、四捨五入などの問題をクリアして法的には問題がないというために実務的な数値として121℃としています。どうしても120℃としたい方は説明の中の121という数値を120と読み替えてくださいね。
<関係式>
DT 値は定義から、次式のように書くことが出来ます。
ここで 分母の log( no/n ) は t 秒間で何桁、菌数が減少したかという数値ですから、殺菌強度の指標です。Heat Stress の頭文字をとって、 Hs とすると(10)式は(11)式となります。
Hs が等しいという条件なら、温度のケース1でのD値を D1 、ケース2では D2 とすると(12)式が成り立ちますね。
同じ耐熱性ならば、(13)式で F=4(分)の場合の殺菌時間(分)が算出できます。
法の規定からlog t121 = log 4 ですね。秒にしたければ4のところに4×60を置き換えてください。
<関係式> 他の温度T℃でt分間の殺菌したときのF値計算
120℃での殺菌時間(分)とF値は同じですから、計算は t120 を求めればよい。 (12)式を変形して(14)式が得られます。
D120/DTは対数をとると引き算になって、本文(21)式の定数項は消えます。すなわち次の項を(14)式に代入できます。
(15)式で任意の温度 T ℃で t 分間の殺菌したときの F値が計算できます。また昇温途中のF値も細かくスパンを区切ることで計算し、スパンごとのF値を積算することで変化する温度における全体的なF値を計算できます。
<F値の計算など>
F=4の殺菌強度に見合う殺菌条件(T℃、t秒)を計算しましょう。
(設問)
本文の第5章で測定した腸炎ビブリオを対象として、殺菌温度Tを 100 ℃に設定したときに、F=4にするには、何分間の殺菌時間を設定すればよいか。
(計算方針)
(計算例)
なお、理論値はこうですが、実際の装置では、装置の設計と運転方法でレトルト食品内部の実質温度はずいぶん違うものです。安全率を数倍に見込むこともよく行われます。省エネルギーや時間節約などの理由で理論値に近づけるなら、必ず実際の装置で製品の中心温度を実測してから理論値を再計算するようにすべきです。殺菌する対象の菌が変われば、Z値もかわるから、殺菌条件もかわります。F値は通常、熱に強い食中毒菌であるボツリヌス菌が対象。12桁減少させる強さの加熱時間が殺菌強度の基準です。耐熱性の芽胞細菌ではZ=7〜11℃くらいです。
食品で事故をおこすと会社全体の責任が問われます。身を守りましょう。そして社会の人の健康を守りましょうね。
サラリーマンなら、殺菌条件の設定前に保健所から文書で適用すべきD値、Z値をもらっておかないとね。