アレスタ(ALESTE)

コンパイル・(2Mbit)・
6,800円・1988年7月23日発売




遂にWiiの上で遊べるようになったMSXのソフト第一弾、「アレスタ」。なぜかバーチャルコンソールの解説や報道ページ上ではかたくなに「ALESTE」の表記が使われていますが、別にカタカナで書いても構いません。なぜって、パッケージの背にはちゃんとカタカナで書いてあるんですもの…。

細かいツッコミはさておき、とかく「ファミコンに負けた」と言われがちなMSXのソフトが任天堂のハード上で遊べるようになったのです。国内600万台と言われるWiiの全てでMSXのゲームが買える日が来た!そしてMSX2実機とほとんど変わらない動作を実現した開発会社のM2さんには惜しみない賛辞を送りたいと思います。

とはいえ情報の少ないMSXのこと、この「アレスタ」の魅力についてまとめられたWebページというのを見かけませんでした。そのあたりを中心に解説してみたいと思います。

さてこのアレスタ、案外知られていないのですがMSX2オリジナルのソフトではありません。元はセガ・マークIII用の同名のソフトが先に存在していまして、そのパワーアップ移植版として製作されたのが本作です。

マークIII版と比較すると、具体的なパワーアップ点は3つあります。

・タイトル画面の変更
・オープニングデモ/エンディングデモの追加
・都市上空ステージ(1面)の追加


中でも最後の都市上空ステージの追加がMSX2版の大きな特長になっています。

その前に、こちらがオープニングデモです。環境維持コンピューター・DIA51の反乱により破壊される都市、巻き添えを食ってケガをする少女ユリィ=レノックス(主人公レイの恋人)、怒って発進する主人公レイ=ワイゼンの姿が描かれます。

ちなみにユリィは一見死んだかに見えますが、ちゃっかり生きていてエンディングでは1カットながら笑顔を披露してくれます。

さらにどうでもいいのですが、ユリィはMSXゲーム界では屈指の美少女だったのに、続編「アレスタ2」(MSX2用、1989年)では娘のエリノアが主人公となると共に、ユリィがすっかりオバサン(中年)になった姿が付属の設定資料に描かれて、一部ファンを大いに悲しませました。当時のコンパイルはそういうノリが好きでしたねえ…。



さて気を取り直してゲーム本編に行きましょう。スタイルはいわゆる縦スクロールシューティングです。
これがMSX2で追加された1面です。

しかしMSX2は滑らかに動かせる「スプライト機能」が貧弱で、同時に32枚しか出せませんでした。
そのため、現在シューティングゲームと言って思い出される、いわゆる「弾幕シューティング」というのとは全く異なるデザインとなっています。

まず、敵が全体的に硬い。出てくる敵を全滅させることはまず不可能、3割も破壊できればいいほう、と言っていいでしょう。

そして、自機の撃てる弾に「特殊弾」と「通常弾」があり、それぞれ破壊できるものが異なるというのが珍しいスタイルです。それも「ゼビウス」のように地上と空中、と明確に分かれているのではなく、敵の弾でも通常弾では消せないものが特殊弾では消せる、といった違いが存在します。特殊弾は全部で8種類あり、それぞれによっても消せるものや貫通の有無が異なっています。

そしていわゆる「ボム」はありません。ケチって押しそびれてしまう人(僕のこと)でも大丈夫!

こちらはボス戦の画面です。1つの面の中で何回かこのような地上物(要塞)が出現し、破壊できるまでスクロールは停止します。

「アレスタ」は敵の弾のスピードも遅いため「見切ってかわす」という局面は非常に少ないです。むしろ敵の弾を破壊して突破するのが基本となります。注意するべきは集団で出てくる硬い敵くらいで、あとはパワーアップした状態でガンガンぶっ壊しまくってそこを通る、という攻めのスタイルを取っています。アレスタの魅力とはこの「とにかく破壊して進む」という点でしょう。

チマチマした弾避けテクニックは全く不要で、追い詰められないように敵に穴を開けていく、というプレイ感覚です。難易度が低めに設定されていることも合わせて、シューティングゲーム初心者向けの作品だと思います。

ただし、初期装備(1番、全方位弾)は敵の弾を消すことができないので、パワーアップした状態に油断して1度やられてしまうと、その後連続してやられ続けてしまいがちです。頻繁に1UPもするので決して難しくはないのですが、パワーアップした状態に慣れきっていると一気にゲームオーバーになってしまうことがあります。


2面です。これはマークIII版では1面だったところで、いささか地味な印象があります。

マークIII版の印象が薄い理由として、MSX2版の1面で随所に出てくる「植物に乗っ取られたビル」というビジュアルがないため、「巨大植物群との戦い」というコンセプトがゲームから感じられないというのがあります。

「アレスタはMSX2版が元祖」だと思っている人も非常に多く、マークIII版を差し置いてWiiに登場したのもうなずけます。

こちらは4面。後年のシューティングゲームと「アレスタ」のもう一つの違いとして、ボス戦より道中に比重が置かれています。最近はボス戦が主体で、そこに至るまでにパワーアップを獲得しておく…という作りのものが多く見られますが、アレスタでは道中こそが主役です。

そのため1面1面が長めに作られていて、全8面を通しでプレイすると約1時間かかります。


いきなり飛んで6面。成層圏まで上がったという設定で、ゆっくりとスクロールします。
細かく描かれた島の地形に注目。

パッケージにも書かれていますが、本作は「MSX-MUSIC」(FM音源)に対応した第一弾のソフトとなります。コンパイルは同じ音源を使っていたセガ・マークIIIで製作の実績があったため、第一弾としてはかなり綺麗な音を聴かせてくれます。

オマケとしてミュージックモードが隠されていて、起動時に「T」キーを押したままにしているとタイトル画面に移行した際に表示されます。何と、USBキーボードを接続したWiiでも同じ操作で出てきます

Wii版はゲームそのものはWiiリモコンだけで遊べますが、USBキーボードを繋ぐと本物のMSX2と同様にちゃんとキーボードだけで遊べるコダワリ仕様です。確かにMSXはジョイパッドが標準では付属していなかったので、キーボードでシューティングからアクションまでこなせる人が意外と多かったのですが…そこまでやるかM2!

いかがだったでしょうか。800Wiiポイントはちょっと高い、という意見もありますが、MSXマガジン永久保存版3(2005年発売)にも収録されておりますので、お好きな方をお選びください。個人的にはWii上で遊ぶ方が感慨深いのですが、それはまあ、個人的な思い入れなので…。

さて(珍しく)いくつか質問を受けているので、まとめて回答したいと思います。


Q.Wii版だと何だか横が長く見えるのですが、なぜなんですか?

A.MSX2実機の表示はWii版のほうがより正確です。Mマガ3号のWindows版は諸事情(主に、携帯機への移植の事情)からドット・バイ・ドットでの表示となっていて、実機よりも表示される横幅がちょっと狭いのです。このページもMマガ準拠のため、細身の表示です。

これは同人ソフトQUADRIVIUMZONE TERRA)ですが、地球がちょっと縦長に見えるのはドット・バイ・ドット表示のため。

なぜMSX実機は横が長いのかというと、CPUクロックを意図的に落として(4MHz→3.58MHz)画面表示に必要なクロックと共用しているのと関係しています。コストダウンの上で重要なポイントでした。


Q.Wii版でものすごくチラつく時がありますが、異常ではないのですか?

A.MSX2実機の表現を忠実に再現した結果です。前にも書いたように32枚しかキャラクターを出せないので、足りないときはチラつかせてムリヤリ表示しているのです。「キャラクターオーバー」と言って、ファミコンでもよく見られた表現です。



Q.Wii版で急に遅くなることがありますが、これも異常ではないんですね?

A.MSX2実機の表現に忠実です(涙)。いわゆる「処理落ち」で、ファミコンでもよくありました…。



Q.パッケージに書いてある「特製!アレスタペーパープレーン」って何ですか?

A.マニュアルとは別に、こんな厚紙がついてました。


実物は黄ばんでます。
組立方法はマニュアル内に記載。

MSXのゲームは星の数ほどありますが、こんなに嬉しくないオマケがついてるのは「アレスタ」と続編の「アレスタ2」だけです。
コンパイルが何をしたかったのかは20年経った今もサッパリ分かりませんが、かつての「少年雑誌」っぽさを目指していたのかもしれません。
そんなテイストをゲームソフトが目指してどうするのか、という疑問が当然のように出てきますが、こっちが聞きたいくらいです。
間違いなく言えることは、こんなものの有無ひとつで中古価格がバカみたいに変わってしまい、マニアを泣かせていることだけです。
ただ、組み立てて飛ばした人の話はトンと聞きません。


Q.取説が発狂しているってホントウですか?

A.ホントウです。


特殊弾の解説(部分)。
左上に「ゲー倫不認可」の文字が。


80年代のゲーム業界が割とおおらかだったことはよく知られていますが、それを差し引いてもヤンチャが過ぎるのではなかろうか、と思います。
ストーリーの解説なんかはマジメなんですが、いきなりこんなのが出てきてクラクラします。
当然Wii版のオンラインマニュアルでは何もかも無かったことにされていますのでご安心を。
ゲーム本編はどこまでもマジメなので、発散したかったのかもしれません。
全部見たければ実物をどうにかして手に入れて頂くしかありませんが、無理をしてまで見ないほうがいいです。高いし。
「○ーるタ○プ」ににているけど、それはきっと君の気のせいだぞ。

Wii版に合わせて3年ぶりのゲームレビューとなりました。
これからも次々とMSXのソフトがWiiで遊べるようになることを願ってやみません。

攻略のポイントとして、特殊弾は3番(レーザー)が圧倒的に強いです。5番(マグ・デストロイヤー)や8番(ウエーブレーザー)なんかは慣れないと最初から持ってる1番より弱いので、3番が出るまでひたすら1番で耐えるのが堅実です。

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