Jump to content    from 05.10.03 最終更新日 05.11.13
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地球温暖化で海は変化しています。サンゴが死滅したり、海藻がなくなったり
魚がいなくなっています
風美海HP
計画内容世界の観光地を目標に 温暖化のメカニズム

地球温暖化に適応できる漁場を作ります


漁業資源が絶えないように
アマモ場をつくり
海藻の絶えない漁場にします
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underwater2.gifunderwater3.gifs.gifunderwater1.gifs.gifamamo.gifs.gif白砂青松
  サンゴや海藻で生かされる海の生き物達
陸上の動物達は、植物が日光をうけて光合成する有機物を食べて生きています。植物がなくなれば、人間も生きていけません。同じように海の中ではサンゴや海藻などが光合成する有機物を頼りに魚達は生きています。

1998年、2001年の夏、世界各地の海で、大規模なサンゴの白化現象が起こりました。サンゴは動物で色はないのですが、色のついた褐虫藻(かっちゅうそう)という藻類と一緒に生活して有機物と酸素をもらって生きています。白化(はっか)とは、褐虫藻が水温30℃を越すような住みにくい条件になると逃げ出してしまい、サンゴが白く脱色したようになる現象です。島中のサンゴ礁が丸ごと真っ白になってしまうこともあります。
白化がおこると、光合成が起こらず、水中の酸素の濃度も低下して、死の海になってしまいます。
冬の水温が18℃を下回る北の海では海藻がサンゴの代わりに光合成をし、生物を支えています。水温が変わると、ウニなど海藻を食べつくす生き物が大発生して、磯焼けという現象が発生します。

最低水温が13℃を下回らなくなる場所へはテーブルサンゴなどのサンゴが着生し生き残る可能性が出てきます。地球温暖化と平行して、日本のサンゴ前線は北上中なのです。
エルニーニョが海水温を上げることは確認されていますが、エルニーニョを起こす原因は地球温暖化による地球全体の海流変化(次章参照)だといわれています。

黒潮など南北方向の海流が弱まることは、地球は温暖化しても冬場の極側寄りは気候がより寒く、赤道寄りはより暑くなることを意味します。いっぽうで夏場の極側が一番地球温暖化で温度上昇しやすい地域です。極地域の寒暖は激しくなります。日本近海の生態系も今までのように古来の生物種が優先する極相から、新参者に入れ替わる変化の時代へと入っていきます。過去の自然が素晴らしいとは言ってはおれない状態に変化してゆくのです。同時に漁場で生産される海産物も変化してゆくことが考えられます。

一つの漁場の漁獲減少を食い止めるために地球温度を元に戻すエネルギーをかけるようなことはできませんから、変化する漁場に人間があわせるしかありません。それはこれまで収穫していた生産物をあきらめ、新しい生産物を見出してゆく継続的な努力を要求されるのです。
一つの魚種を放流するのでは、気候変化の時期の対応としては危険な賭けとなります。それより、豊かな多種類の魚種が生存できる海底を準備しておくことが一番の安全策なのです。そして、海の中の変化を科学的にモニターして漁民にどのような海産物の収穫が今は一番収入が上げられるかの情報を提供する体制作りが求められているのです。

漁業資源を確保するには、こうした変化に強い、日光のとどく海底の面積を広げておくことが必要です。(第1章 温暖化防止の具体策 参照)

同時に外洋型のメガフロート技術が可能となれば、夏季の一時期、渇虫藻が離散するような高い温度が生じるような時期に、低温の深層海洋水を黒潮の上流側からさんご礁のリーフ内に流してサンゴ礁周囲を冷やすことが出来ます。

さんご礁の白化を予防できるのです。同時に冷却だけでなくプランクトン類の増殖に必要な栄養塩が供給できます。

白化を予防する技術として、夏季に増殖する海藻類をネット上に養殖して、サンゴ礁海面を覆い、水温の上昇を防ぐことも考えられます。まだまだ人間ができることは、数多くあるはずです。そのためには国家プロジェクトとしての研究がおこなわれる必要があります。 従来の大学中心だけの研究では、ビジネス化するにはまだ研究の環境はお寒い状況です。

 

          
  海を壊しているもの

海の栄養塩を限度以上にふやすと、海藻の海中林が生育しなくなります。理由は、植物プランクトンが過剰に増えて海水が濁り、日光が海藻類まで到達しなくなるからです。
土砂などで濁ったり、粘土などで海藻の表面が覆われてしまっても同じ結果となります。

さんご礁でも、サンゴに共生する渇虫藻という藻類が光合成しているので、日光が遮断されるとサンゴが生育できなくなります。沖縄の農業事業で土地の整備事業を無配慮におこなって、赤土が流れ続けてさんご礁を破壊しつづけた事例があります。

海藻の生育が悪くなると、海藻を食べる魚群の比率が相対的に高くなり、急速な海藻の減少が始まります。この状態では、成長途中の海藻が食べられてしまうので海中林を再生することが非常に困難になってしまいます。

冬場の海は外見上きれいに透き通っています。しかしこの時期は、海底には生簀漁場からの餌の残りかす、市街地からの下水排水などで有機物が分解されずにたまっていく過程です。この時期に海水CODをはかってもきれいなだけです。さらに、春先には冬場に増える海藻たちが枯死または剥離し、沈殿してゆきます。春先には有機物が海底にいっぱいあるのです。

この海底はすでにヘドロ化しているはずです。恐ろしいことにこういうヘドロのある場所には、赤潮の種が数多く潜んでいます。海水温が20℃を越えるようになるとあらゆる赤潮の種が芽を出し、どんどん増殖し始めます。その他の植物プランクトンも活発に活動を開始します。海が濁ってゆくのです。こうなると海底には海藻が生育できなくなり、海底には酸素が供給されなくなって海底がヘドロ化します。そして発生する毒ガスの硫化水素が海洋生命を一網打尽にしてしまいます。

赤潮でサンゴが死ぬかどうかは具体的な実験をしたことがないのでよくわからないですが、赤潮が出るような海底条件はヘドロ化しているのが通常ですから、発生する有機酸と硫化水素によってサンゴを含めた酸素を好む生命が絶滅しているのは確かです。

濁っていない、透明な海底なら、海藻が日光を受けて酸素を供給しますから、硫化水素をだす細菌類も活発には活動できなくなります。海藻類はヘドロからでてくる豊富な有機塩類を吸収して成長しますから、栄養塩濃度が下がり、植物プランクトン類の成長も遅らせることができます。海水が透明に保たれるわけです。

さらにその上、酸素があるから海底に生息するゴカイをはじめとする多くの泥の中の有機物を食べる生物達が活動することができます。彼らは赤潮の種など飲み込んで消化してくれます。

海を再生するには、海水を透明にすることと同時に、海藻類をかなりの面積で準備しておくことが必要なのです。何よりも食べ残しの餌を海底に山積みにするようなことを禁止しなければなりません。

それにしても、通常は磯焼けになれば海藻を食べる魚群が減少しそうなものですが、減っている様子が見られません。ブダイ、アイゴやウマヅラハギなどは養殖漁場の下に落ちている餌でも生きのびれているのでしょうか。これまでのようにすべては都市排水のせいにせず、漁業関係者のやっていることも研究ではタブーにしないで、きちんと調べることが必要でしょう。

植物プランクトンはもともとその海域に豊かな漁獲をもたらす一次生産者です。しかし海を濁らせるほど増えると、せっかく生成した植物プランクトンが海底に沈降して腐りヘドロ化して硫化水素と貧酸素のために、今度は底性動植物の生育が阻害されてしまいます。海藻や底性生物の死骸もヘドロ化に加担してしまいます。海はいつまでも、赤潮や青潮と低漁獲になってしまうのです。

単純な理屈ですね。流入栄養塩に対して、植物プランクトンが増えすぎないように、ある一定以上の海藻類が栄養塩を吸収するシステムになっていないと海は死ぬのです。

ところが、これまでの日本人は、公害防止の法律が機能するまでは都市下水が海を汚してきました。最近では、美食ブームが継続して、そのための高級魚類を供給するシステムとして海洋牧場を作りました。養殖や畜養で多くの過剰の餌を狭い範囲の海に投入しつづけました。海底は食べ残しの餌の山です。最初に影響が出たのは八代海や有明海などの閉鎖性海域でした。

さらにその上、漁港整備とか護岸工事をするという名目で、海中林の生育する深さの海を埋め立てて、海藻の総量を極端に減少させてしまったのです。過剰の餌が供給する栄養塩は植物プランクトン専用になってしまいました。こうなると、これまである深さで生育してきた海藻類は濁りのために一網打尽に減少し、急速な海藻類の総量減少をもたらします。

海藻の生育領域はかなり狭いものです。単純に言えば、人間が経済性尊重とか前向きとか言って埋め立てや干拓事業を行ったり、護岸で少し海側に土地を広げたり、市民の憩いの広場作りといって、浅い海を選んで土地を形成してきた行為は、養殖漁業の発展とともに急速に海藻類を減少させ、栄養塩を吸収するシステムを破壊し、海を死に至らせる行為でしかなかったのです。

干潟作りと魅力あるウォーターフロントづくりを並べて矛盾あるスローガンにしている都道府県はまだ多い。深い海ではなく海藻のある浅い海にウォーターフロントを作る計画が、干潟作りと平行して提出されるのです。

最近は、これまであまり商品にならなかったアカモクやモズク系の藻類がガン転移を防ぎそうだという理由だけで海の森が乱獲され始めています。海洋開発という前向きな用語の下で、海洋生態系破壊と地球温暖化が加速化されそうです。なぜ、漁獲を守るということすら守れないのでしょうか?金儲けには前向きでも、子孫の生存には無関心ということでは平成の男は情けない。
海洋開発ばかりに目が向く行政関係者が多い中、はやく、海洋生態系を守りながら経済性を追求できる法体系を設定する必要があります。

行政は魅力ある「生命のいない汚い海のウォーターフロント」を計画するより先に、「生命が満ち溢れる透明な海」を計画するのがその使命です。

作ってしまったヘドロを宝にしてしまいましょう。栄養塩の少ない黒潮の表層水を、都市の停滞海域を作っている内湾の奥に継続的に流し込む設備を作るのです。湾内の栄養塩が少しずつ外洋へと流れ出します。

外洋では植物プランクトンの生産がふえますから漁獲の底上げができます。同時に湾内には黒潮の導入海域から少しずつ海藻の森がよみがえるはずです。よみがえった海藻の森は多くの底生生物を育み、作った設備と比較にならないくらい大きな海域浄化力を持つはずです。

海域の浄化力が向上すれば、下水道設備の適正化、赤潮対策費などの直接費用を削減でき、漁獲が向上します。さらに泳げる海域を確保でき、そこは魅力あるウォーターフロントになるはずです。

植物プランクトンは悪者ではなく、地球温暖化を抑制してくれ、海を豊かにしてくれる救世主です。人の限度を知らない欲望が海を破壊しているのです。最後には高い魚を買う羽目になるのは消費者です。マイワシなどは高級魚になってしまいました。学者の中にはこうした植物プランクトンなど一次生産者に近いものを食べて増える魚は温暖化といえども今後とも安心だといっていますがそうでしょうか。こうした稚魚はホンダワラなどの海藻が流れ藻として漂っている所で保護され成長します。流れ藻自体ができなくなれば、幼魚の供給が途絶えてしまいます。魚の生活環を考慮せず、一部だけの知識を振り回してはいけないのです。

アメリカの西海岸にラッコのいるジャイアントケルプの海があります。ラッコはウニを大量に食べます。ウニはジャイアントケルプを食べます。そして日本人は大量のウニを食べます。西海岸の漁師達は日本人向けに年間80億円にものぼるウニを輸出しています。ですからウニを食べ荒らすラッコが邪魔でしょうがありません。

過去には日本の北海道にもたくさんいたラッコは、高価に売れる毛皮のせいかどうかわかりませんがいなくなってしまいました。そこで起こったのは、コンブの林がウニに食べ尽くされ磯焼けという現象が常態化してしまいました。大量のウニが残るのですが、海藻がないためにやせ細ったウニで商品にはなりません。

西海岸の人々がラッコを駆逐すれば、ジャイアントケルプの海は磯焼けの海になるのでしょう。そして年商80億円も消えていってしまうのです。 年商80億円を維持するためにはウニから食べられるコンブを保護してくれるラッコを大事にしなければなりません。持続性のある漁場作りとは、人間が欲しい魚種だけを放流するような行動ではない所に注目しておく必要があります。ウニもコンブも採れる海は、ラッコのようなウニの調節者が必要なのです。生物の多様性のバランスが良い海ほど海からの生産量は高くなることが知られています。

日本では漁獲を落とす悪者としてサメが捕獲され駆除されています。

同時に起こっていることを考えてみましょう。温暖化で南方からきたナルトビエイが増加し、アサリをはじめとする底性生物を一網打尽にして大幅に漁獲を落としています。他にも温暖化で北上しているブダイやアイゴが藻場に生えている海藻を根絶やしにし始めました。磯焼けです。これらの生物が日本へ生活拠点を移し始めたことは生物の遷移現象だろうと考えられます。このような状況は魚類の幼稚子の生育の場を奪っていますから漁獲が激減しています。

サメはナルトビエイや大型のブダイなどを捕食して増加しています。サメが磯焼けを防止し、干潟を守っているのかもしれません。「サメが多くなったから漁獲が落ちた」と見かけ上サメがタイやヒラメを食べているので漁獲が減ったように見えてしまいます。見かけの相関という事例かもしれません。漁業被害対策費をつかって県はナルトビエイやアイゴ、ブダイなどの天敵を駆除しているようにみえます。いつまでも磯焼けの回復はないかもしれません。アイゴなどの天敵の研究が急がれています。

高価なふかひれが取りたくてサメ悪玉論をぶち上げているようなことがないことを願いたい。消費者は冷静に本音を知ろうとする姿勢を持っている必要があります。

ラッコと同じことが起こり始めているのかもしれませんね。

石油エネルギーを利用して動力を使うようになった人間は、海でもそのキャパシティをすぐに越える活動をしていることに気づく必要があります。すでに海は何でも受け入れ、供給してくれる無尽の場所ではなくなってしまったのです。手漕ぎ舟での漁なら魚を取りすぎることはないでしょう。そうすれば畜養などするほどの魚も取れないはずです。

エンジンつきの船をやめろと主張しているわけではありません。

強力に海を汚しているのだから、その強力な力で、汚した分を上回る、海藻の生育する光底の面積を強力に拡大するしか方法がないのです。そうすることが、海を汚してきた人や海中林を壊す決定をしてきた人々の責任だと思うのです。そして、これからの研究から蓄積してゆく海の中の生態系のデータベースを豊かにして、作り上げた光る海底を生産力の高い海に作り上げてゆくことが求められています。

 

 
  仔魚たちのゆりかご − アマモ場

風美海プロジェクトは他人を糾弾することが目的ではありません。原因を考え、ふさわしい具体的な提案をすることが目的です。以下のように海底を設計してゆきます。

干潟に隣接して水面下5mくらいまでの、砂地ゾーンが形成されます。巨大台風でも砂が動かないけれど、海水は充分に更新される砂地です。ここはアマモ場といわれます。そこには強い波や海流がこないように、テトラポッドなどで囲われた場所になります。

ここにはアマモという植物が育成されます。アマモの茂る場所がないと、魚達は産卵したり稚魚の隠れる場所がなくなったりして、漁場を作っても魚種が増えません。アマモ場は生物循環上の重要な場所なのです。
この波のない静かな場所で大きな砂粒が沈殿します。埋立地からの流出土砂の最後の受け場所となります。こうしていつでも海底に日光のとどく透明な漁場が形成されます。サンゴや海藻が育つ環境条件のひとつがクリアーされます。

岩礁に生活する魚類でも稚魚の時代に、アマモ場や砂浜の海岸で生活します。海洋生物を保護するには、砂浜・干潟・隣接するアマモ場や岩礁・ガラモ場などの藻場があってこそ、海洋生物の卵・稚魚・幼魚・成体・生殖の生活史が完成します。捕食されないで移動してゆけるように、稚魚や、えさとなる生命体達の移動可能な距離に隣接した環境であることが重要なのです。

どこか一部だけを取り上げて準備しても海洋生物の生活史上のどこかが欠損してしまうと漁獲は減少するでしょう。

価値の高い魚類だけ放流しても、放流後はエサとなる生物全体の生態系の中で増殖するのだから、環境の制限因子によって漁獲高が抑えられてしまいます。放流されたヒラメの稚魚もアマモ場に行き、小えび類をえさとして成長します。アマモ場がなければ数百万匹放流したところで成長する場がないので増えることはありません。
我々の目標は再生産される全生命量を増加させる環境作りです。このために最低限の条件は、幼生を保護する生活史の環境整備、光の当たる海底づくり、および生育する海藻やサンゴによって酸素が供給される条件を作り上げることです。

埋め立て後のアマモ場の砂流亡や干潟の砂流亡を軽減するために、有孔虫の生育環境保全がなされます。

アマモの葉柄には星砂となるバキュロジプシナなどの有孔虫が付着して成育します。単にアマモ場を造成するだけでなくバキュロジプシナなど底生生活をする生物の環境も整えます。石炭の焼却灰から造粒した砂では美しい白い砂にはなりません。有孔虫が白い砂になるのです。有孔虫の炭酸塩生産力は、700g /m2/年と見積もられ (Sakai and Nishihira 1981)ているので、1 haあたり7トン程度の砂が生産されます。

川を持っていない人工島で海浜や干潟を維持するには、こうしたアマモ場から作られる星砂は重要な海浜維持技術となります。

将来の地球温暖化が進行することを考慮すると、現在造礁サンゴが増加し始めている天草以南で風美海プロジェクトを開始して、ノウハウを習得するのが得策でしょう。同時に中部以北で海藻による漁場形成地域も並行してノウハウ取得することが望ましいと考えます。

 

 
  致命的な白化や磯焼けが回避できる漁場の形成
メガフロート上には漁礁製造工場があります。設置装置の中で一気に数階建てのビルの高さの漁礁を作ってしまいましょう。輸送の必要がないので巨大台風でも動かない単体で巨大な漁礁が作れます。形状もまた比較的自由に選べる利点があります。

ビル大の漁礁を海につるす
ビル解体のコンクリート塊を粉砕ぜずに、そのままメガフロートまでトラックで搬送し、漁礁製造場でトラック数百台分を接着させてそのまま漁礁にするという、省エネルギーをモットーとした漁礁製造ができるはずです。

漁礁の投入直前にサンゴ苗や海藻苗が付着した発泡コンクリートなどを漁礁に取り付け、海中作業としない方法をとることができます。

漁礁を整然と並べるには、すでに設置した漁礁の端に投入用のガイド板を接触させて垂直に降ろします。このガイド板の厚みは漁礁間の隙間となり、イシダイなどの生息地を提供したり、磯焼け防止の保護区を作るときの重要なバリアーとなってくれるでしょう。

海藻をえさとするウニなどは、上下方向において好む深さの分布域があります。ウニが分布しない場所には海藻やサンゴの一部が生き残ることが出来ます。海底が水面下1〜20m程度まで凸凹していれば、部分的にできた白化や磯焼けが自然に回復できる条件が整います。

あるブロックだけ常にウニ類を駆除しているようにすれば、巨大な1ブロックの漁場内はそこは海中林として周囲に遊走子などを供給する基盤となります。日本にはすでに多種類のロボットの原型が存在します。魚やくらげなどに似せた移動形態をとるロボットを開発しましょう。獲物はウニです。移動しながらウニを発見したら、ニードルで一刺しして殺して回ります。時々自動的に浮上させて電池を交換します。

ブダイなどの食植動物だけを狙うハンターロボットをこのブロックに常駐させておくことも可能でしょう。何しろ海藻があるから向こうからよってきてくれるのです。

漁礁には幾何学的な構造をとらず、様々な大きさの穴をあけておきます。いろいろの大型魚類は、海藻とサンゴを捕食する生き物を退治してくれるでしょう。FRP船を作るときにプラスチックを強化するためにグラスファイバーを混ぜ込みます。同じように建築廃材の木材を漁礁の中に組み込むことができます。鉄筋とこれら木材で補強された中にコンクリートを流し込むような漁礁形成が可能です。建築廃材の中でも木質の部分は漁礁に組み入れることで、複合漁礁となります。コンクリートは好まなくても、木質は好む生き物も多いでしょう。
環境条件が一様だと、単一の種類の生物が増加します。条件の変化で一気に死滅することもありえます。生物の多様性は、海底全てを一気に白化させて再生不能にすることを防ぎます。
さらに今後、地球温暖化で海流が変化することが予測される中、海底の凸凹や素材の多様さは、自動的に生態系が豊かなまま変化できる条件でもあるでしょう。そういう意味では鉄骨がむきだしの建築廃材も海底に沈んでいていいのです。

電気分解

廃船をそのまま漁礁にする方法もあります。廃船に太い荒縄をぐるぐる巻きにしてその表面を金網で覆います。船底を上にして沈めればよい。金網の両端には微弱な電流を流しておけば炭酸カルシウムが析出してきて表面に満遍なく付着します。この作業は数日で済むはずでです。この状態にすれば、金網表面はサンゴと同じ成分だから、電流を止めてもいろいろな生物が金網上に付着生育してきます。

廃船と金網の隙間には子魚やアミ類の逃げ込む場所が出来るし、荒縄には海草が付着生育します。ウニ類は大きくなればこの隙間では動けなくなります。そして今度は本当にサンゴが付着して年々岩石化してどっしりとした漁礁に成長してゆくはずです。

この技術を使えば、漁礁に簡単な施工で小動物避難ゾーンや、海草捕食魚類の隔離ゾーンを形成することも可能です。電気分解技術が面倒であれば、セメントスラリーのスプレーで金網を被覆すればよいだけの話です。

海底の施工といえば捨石の均(なら)し方に気を配りますが、凸凹をつくる漁場形成では、漁場になる天面より、むしろ深海における強度のある側壁を安価に形成する方法がポイントになるでしょう。

海洋温度と海流が毎年変化していく時代にどのような海底が漁獲変化に頑強なのかは誰も知らないことなのです。だからこそ、大学院研究所を現地に設置することは最も大事なことになります。

 

 
  ワカメなどのロープ栽培と酸素供給
炭酸ガスの温暖化で海が酸性化してサンゴの骨格が溶解してサンゴが絶滅すると悲観論を言う人々がいます。海藻や植物プランクトンが光合成をすると、水素イオンが減少しますから、海水がアルカリ性の方向に進みます。海洋深層水の栄養塩と低温をうまく利用して植物プランクトンや海藻を増やすことができればサンゴの骨格が溶解する酸性化は防止できるでしょう。

海洋制御技術を早く身につけることです。

コンブ、ワカメ、カキなどはロープの表面で栽培できます。埋め立てた漁場の中に、かなりの距離でもピンと張れるロープ止めを埋め込みます。海底からロープが浮いていればウニもあがって来れません。
緩めれば舟の上で、ウニの除去や、必要な海藻の選別や収穫が出来ます。
メガフロート上での優良苗のロープへの付着、船上での収穫やメンテナンスができるのです。漁民には、沿海漁場と栽培海面とが手に入ります。

海底が全て白化しても、ロープ表面の海藻が生きていれば海水中への酸素の供給が継続され、サンゴの死滅を遅らせることが出来ます。海水温が渇虫藻の生育温度まで低下する期間を持ちこたえれば、サンゴの壊滅的な打撃が防げるでしょう。

ヘドロ化した海底を持つ海に、かなりの面積で海藻の種を付着させたロープをはりめぐらせることができれば、海水温の急激な上昇を防止し、海水表面の栄養塩を吸収してくれます、それは海水の透明度を上げることに貢献します。海底まで酸素を送れるようになれば、底生生物がよみがえってきます。浚渫をしたり、埋め戻したりする強引な方法だけでななく、自然の摂理を利用した方法も考えるべきです。

海底が磯焼け状態であっても、宙吊りになったロープ上に海藻類を保持しつづければ、海底の磯焼けの原因がウニによる場合はえさ不足によるウニの減少を期待できますし、石灰藻(無節サンゴモ)の場合なら日光を海底に届かせないほどの栽培で石灰藻の減少を期待できるでしょう。

ただ、石灰藻は磯焼けの原因と言うより、おそらく人為的とおもわれる何かの原因がもたらした結果です。我々は、磯焼けの元凶と思い込んで、自分の経済的都合だけで石灰藻を嫌っているだけであって、北の海でサンゴと同様に炭酸ガスを吸収してくれる存在をもっと知る必要があるでしょう。海底構築物を造った当初は石灰藻で炭酸カルシウム(石灰石)層による表面の強化をしておいてから、徐々に海中林形成をさせてゆく作戦だってとれるのですから。 海の民日本人はもっと海のことを知ることが求められています。そのことが結局は海洋開発を経済的なものにしてくれるのです。

メガフロートにはいかだ など浮体による種苗の漁礁への誘導付着ができるような設備を整えておきます。
この技術を発展させれば、将来は外洋での浮体漁場へと発展してくれるでしょう。重くなりすぎたさんご礁は沿岸に運んで沈めれば継続的な漁場の拡大が見込めます。
これらのシステムは、海水の急激な温度上昇などで漁場が荒れてしまったときでも、漁場の環境変化に応じた新規藻類やサンゴなどの早期導入にも対応可能となります。
海底には計画的に多目的の係留ポイントが多く設置されます。陸上は、古代の日本の再生ですが、海中は里海として管理された漁場となります。

漁場形成が終了してメガフロートが退去したあとは、外洋への浮体風車の発電ゾーンが形成されてゆきます。浮体風車の間にはロープを編んだネットに海藻を植え付けて養殖したり、流れ藻を保持したりするバイオプランテーションが形成されます。そのねらいは単独ではなく次のような目的をもちます。

  1. サンマなどの幼稚仔の保全
  2. 外洋域に新漁場を形成
  3. 収穫される海藻からジーゼルエンジン用のバイオオイル取得
  4. 沿岸での藻場破壊の禁止と医薬品などの取得代替原料の供給
海藻のバイオプランテーションを形成することで風車による発電と水素製造、海藻によるメタン、メタノールまたはバイオオイルなどの製造など様々なエネルギー原料の取得が可能となり選択の幅が広がります。

 

 
  次世代の企業育成の役割をはたす研究所

ミチゲーションの概念に、食物連鎖(または生態系ピラミッド)だけを考えていては失敗します。食うか食われるかだけでなく、あるひとつの生物だけで考えても、卵から成体になるまでの必要な環境が異なります。たとえば、食物連鎖の最初の生物である藻類が必要なのは、太陽光と栄養塩と適した海水温度です。生物ではないですね。
さらに、海洋生物には生活環があって、卵の場所−幼生の住む場所−成体の住む場所−生殖の場所などまったく別の環境になることが良くあります。魚の住む場所だけ準備しても、餌の生活環の一部を破壊すると魚のほうが生きられなくなります。

ミチゲーションは藻場を作るとか干潟を作るとかいったおおまかな理解の仕方だけの工学的な概念だけでとらえるべきものではないのです。干潟のミクロの部分の構造まで影響してきます。藻場の中にある岩場の小さな穴の構造がいくつかの生物同士の食物連鎖構造を可能にしてくれます。ただ湿地を作ればよいという考え方でも本来は良くないのです。その場の湿地を成り立たせている条件を理解する必要があります。

複数の生物の生活環がお互い行き過ぎないように充分回るには、たとえば「ほんの少しだけの水際の苔が生き物の数10mmの体長サイズに見合う条件の高さで準備されていなければいけない」というような種類のことだってたくさんあるわけです。すべての生物に見合った条件を同じに整えることなどできませんが、研究すればかなりいい線でうまく回るということなら可能です。

これまで公的機関で設定されてきた藻場(あるいはその効果を併せ持つ漁港など)の設計基準は現時点での現地だけの最適環境創造の思想で作られています。
失敗がないように現地の海域調査を行い、自然に成長している藻場の水深、水温、勾配、濁度などを調査して、最適な水深に最適な勾配を持つものを最適な素材で全面に施工しようとするやりかたです。作られた環境が均質すぎて数年後には、対象とした藻類にとって住みにくい環境に変化する可能性があります。

これでは、温暖化による海水温度上昇がもたらす海生植生の変化には追随できなくなります。現状とは変化している状況の一点を見ているだけだからです。
研究姿勢が、海中林だけの観察に終わり、それを保持する他の因子によるサポート環境への視点が欠けています。たとえば、わかっていることだけでも、ウニの食圧や、栄養塩の供給ルートなどのことは広い地域で観察されなければなりません。温暖化とは海水温が上がることだからもっと南方の海の状況も見据えた研究と設計が必要なのです。

磯焼けだってわからないことだらけです。
ひょっとすると、南方域で藻場よりサンゴ礁が優勢である理由は、海水温の上昇とともに、アイゴなどの魚類の活動が活発になりやすいためであるかもしれないわけです。そういう理由なら無理に藻場を回復するより、積極的にさんご礁を育成すべきだということになります。

黒潮の水温上昇が南方の魚類などの生物を増やしています。これまでですと、冬場の低温のために死滅してしまっていた南方からの生物が、生き残って繁殖をはじめています。冬季に海を冷やせば、こうした繁殖が防止できるかもしれません。あるいは、遷移の変化をゆるやかに出来るかもしれません。
海洋深層水は常に低温ですから、魚類などの幼稚仔が生活する藻場やアマモ場をねらって深層水を誘導し温度を下げる方法が考えられます。海洋深層水の利用はその栄養塩の利用だけを考えるのでなく、低温の効果も考えて利用すべきです。それは、地球温暖化による変化を局所的に緩和してくれる方法であるからです。

世界の人々が漁業権を主張するようになって、私達は獲る漁業から作り育てる漁業へとシフトさせてきました。この栽培漁業の方法は、人間がほしい魚種の幼生や稚魚を管理育成して放流するという方法論で進められて来ました。しかしすぐに破綻してこの方法では限界があることが明らかになりました。

放流された後必要なのは、これらの稚魚が生きてゆく餌の確保やそのための環境です。数百万匹放流しようと、生き残るのは律速になっている生活環の部分以上には増えません。行き過ぎた畜養でヘドロ化した環境で赤潮が頻繁に起こるようになっていれば、こうした魚を増やすには、稚魚の生育場所のアミ類や、動物プランクトンの増加を図ることが目的にされなければなりません。
研究対象の測定指標がアミ類の生産指数とかそういった、人間には興味がないが稚魚にとって必要なものになっている必要があるのです。
キタムラサキウニが高価であるため、これを放流した結果、昆布を含めた海藻類を食べ尽くし、翌年の海藻の再生のできない磯焼けを招いてしまいました。国民の税金を投入して回復を図ろうとしていますが無理なやり方が継続するはずがありません。

ヒラメを放流してみましたが、思うように漁獲は上がりません。ヒラメの幼魚のエサはアマモやスガモなどの海草の周辺に住むアミ類や小動物です。アマモ場は護岸工事や埋め立て対象地域になりやすく消失しつつあります。ヒラメを増やしたければ魚類を食べられるようになる大型魚に成長した状態でないといけないのですが、これでは放流の意味はありません。

栽培漁業を成功させるには、漁獲の前提である興味のない小動物の生存環境の整備・保護が最初になされるべきことなのです。栽培漁業の研究は、その研究対象を欲しい魚だけの研究から、その魚の稚魚の餌や生存の条件へとシフトしなければいけません。 全ての生き物が生きてゆく環境維持こそが、豊富で安定した漁獲の条件だったのです。 地球が温暖化しつつある現状では、これまで極相になっていた生物層が新しい極相に向かって否応なく遷移をはじめています。しかも毎年上昇する海水温度は、毎年極相が高温側へと変化していくことを示しているのです。

海草や海藻には陸上植物のような極相がないとの主張が存在しています。海藻は1年で消長するから白馬山系のぶな林のように極相林のようにはならないという理由のようです。

いま地球温暖化と酸性雨でぶな林が消滅の方向に進んでいます。ですから地球温暖化が前提になるとぶな林はすでに極相ではなくなっています。

サバンナの極相は潅木と草本植物だといわれます。雨季に同じ種類の草が生育します。気温変化や、降雨の特徴、日照などの気候条件に応じて、一年草を含めた植物群の群生パターンはその条件の極相にむかいます。

海底でも同じようなことが起こっています。最低水温が上昇したために、これまでサンゴの生育が見られなかったところに、海藻を押しのけてサンゴが成長しはじめています。
海には極相がないと主張すると、海の環境条件変化に対応した再現性のある結果はないと主張することになります。「日本の海の海藻たち」という概念がなくなってしまいます。海にも遷移と極相の概念は必要なのです。温暖化しているなかでの研究は気候の定常性がないため再現性がないように見えるから難しいだけなのです。

林業からの極相林の定義を無理に海藻に当てはめようとするからおかしくなってしまいます。

小さいスケールでの施工事例なら現時点での現地の最適環境創造の思想でもよいが、この取り組み姿勢では温暖化の進行を前提とする風美海計画では多くの資金が水泡と化す恐れが高くなってしまいます。一部の水産関係者だけの企画では多額の資金投下が無駄になる可能性が高いのです。

海外のアサリや、幼稚仔を購入してしばらく畜養し、日本産として販売する形態をとると、魚介類の新しいウイルス等を日本に導入していることになります。実際に、魚類の病死は増加しています。日本の水産関係者は、ウイルスに強い魚を選抜するなどというアイデアで動いていますが、海外からウイルスが入ってしまってからでは、耐性の魚や病害に強い魚など作ってみても、ウイルスが変性すればいたちごっことなってしまいます。遺伝子操作でこういう魚を作れば学会では有名になるでしょう。しかし漁獲を増やすという方向ではあまり役に立たないとおもわれます。

赤潮の中で育つ不健康な魚にしないことが、一番強い魚を得る方法です。養殖漁場の底質が赤潮を生むほどにヘドロ化させていることなら規制でなくすことが出来ます。すでに悪くなっている底泥にはヘドロの浚渫などで健全な海底を取りもどすことが出来ます。
あるいは、海面にネットを張り、生育する海藻類を食品とかバイオマス原料として回収することで所得を得ながら、時間をかけて海底のヘドロの持つ栄養塩類を除去してゆくおだやかな方法だってあります。
海藻が酸素を供給してくれることが、ネット以外の海底でも底生生物を生きのびさせてくれます。彼らはヘドロの有機物を消化してくれますから海底の栄養塩除去スピードが上がります。

漁獲の低減の原因を素直に反省することが必要です。藻場と浅瀬・干潟などの安易な埋め立てを認めてきた行政はやり方がいけなかったと認めるべきですし、漁民も自分達のやり方が悪かったと受け止めてこそ全員が全体を見渡して求心力のある施策を進めることができると思います。

現在の漁場環境整備の進め方を観ていると、単に稚仔養礁を作ったとか、アマモ場を作ったとか、干潟を作ったとか工学的な視点で一部だけを実施して、ばらばらな対策をしているだけに見えます。海流、干潟、アマモ場、汽水域、藻場、浅瀬、漁場は隣接して一体化して初めて多くの魚の種類が生存し豊かになる条件を満たします。

小さい頃、穏やかな川や海岸の波打ち際に群れをなして移動しているボラの子供を見たことがある人は多いはずです。大きな魚がくることのできない波打ち際なら安全に移動できます。垂直護岸ではボラの子供達はすぐに大きな魚に見つかり食べられてしまうでしょう。

海の中のチビたちがこっそりと隠れながら移動できる環境が、これまでの人工物には考慮されていないので、成魚になれる数が極端に減ってしまいます。

埋め立てで一体化していた条件を地理的に分断してしまえば他に干潟を作ったからといって今までの漁獲が維持できるわけではありません。机の上の干潟作りは新しい漁場を作っているリスクと同じです。

藻類からサメまで多くの生命体の生活環がオーバーラップして回るからこそ良い漁場が成立します。一部の目的魚が住む場所の最適環境だけ作って、その魚の餌となる動物プランクトンなどの増殖できる場がなければどうなるか、考えればすぐにわかることです。餌を増やす環境を整備しないで漁礁だけ設置しても多少の漁獲増加が達成できるだけにすぎません。アマモ場だけ作ったからといってすべてうまくゆくわけではありません。「アマモ場を作れば自然が回復する」と言葉で考えてはいけないのです。

浮き漁礁に魚類が集まれるのは、魚がどこかでたくさん増殖できていることが前提です。総量が激減した魚類が他より少し多めに集まっている浮き漁礁でよいならそれでいいのですが、本来の魚群が大量にいるほうがもっといいはずです。いまだにミチゲーションと称して、既存の宝石のような藻場やアマモ場、浅瀬をうめたてて干拓を続け、代わりに規模を小さくした干潟を作ったとしても、生命の循環の場を分断してはうまくいかないでしょう。言い訳のミチゲーションにしてしまったら、今後の開発行為はどんどんやりにくくなってしまいます。行政はもう少しかしこくなる必要があります。現に広島ではそうなりつつあります。

現時点では、どうしてよいかわからないのなら、干拓場所は、光のあたる海底は避けるべきでしょうし、漁場を最適化思想で均質に作らず、多くの水深や勾配、穴、水流、素材など多様な状況を作るしかありません。それよりも、これから建設される漁場から充分なデータが蓄積され、次の地域での漁場作りではその研究成果が生かされる仕組みになっていることが大事です。

単に、従来の学問の分野で分類していては水工土木、水産、バイオ、コンピュータシミュレーションなどを統合することはできません。 そのためには、大学院大学などの研究設備と、実務的な育苗施設運営が一体化した新事業インキュベーターとしての研究施設の設置は欠かせません。
安定した漁獲、安定した漁民の生活を考えるには、世界各国の海底で起きている遷移の情報を一箇所に集約させて、応用できるように研究体制を整備する必要があります。

これらの情報は世界中の人々に役立ちますし、大きなビジネスチャンスでもあるわけです。

この研究所をメガフロートの主要機能と位置付けることで、アメリカがシリコンバレーから多くの巨大企業を生み出したように、次世代の海洋開発の巨大企業が生まれてきます。

 

 
  海水面上昇に準備すべきこと
既存の海岸線が、温暖化により後退したとき、海藻の場合なら3年程度で海中林の育成が期待できます。いっぽう、サンゴの場合はさんご礁を形成するまでの時間がかかるので早急なさんご礁の形成をさせる必要があります。そのためには、海岸線近くにサンゴの種を持つ漁礁を確保しておく必要があります。

地球温暖化で最悪のケースでは100年間の間に88cmの海面上昇が見込まれています。最近のIPCCの発表で、この数値が上方へと修正されました。沿岸の漁場としては、日光が海底に差し込む限り、直ちに影響するということではないでしょう。サンゴの成長も100年に40cm程度ですから、西日本では漁場の深さは50cmていどしか下がりません。

むしろ、汚濁を除去する干潟の消失や、継続する護岸工事によって引き起こされる海水の汚濁が生じます。著しく水産資源を減少させる光の遮断を防ぐため海水の透明度をどう制御するか、工学的な研究が急がれます。

現在行われている海面埋め立て方法は、海をにごらせる点で公害です。浮遊した土砂は日光をさえぎるだけでなく、サンゴや他の藻場を埋め立ててしまい漁場を荒らします。海水の透明度を落とさず、土砂が拡散しないような埋め立て方法が求められています。

海が陸上に侵食することを防止する、直立の護岸をもつ海岸が増えることは他の問題を大きくします。干潟の消失や、藻場の変化が生じてしまうから、海産物の産卵や生殖の場がなくなり持続的な漁業ができなくなるからです。

護岸工事と干潟や藻場の整備はセットで考えておく必要があります。

生き物達は、これまでの自然に適応させた生存戦略はもっています。しかし、ものさしで描いた均一な垂直護岸に適応できる生物種は極端にすくないはずです。大型の魚を寄せ付けない環境で幼魚たちが身をかくすことのできる人工物は、やはり自然を模したものになるはずです。

そういう視点でお台場周辺の「街と海のプロムナード」護岸を見るといかに人工的かが解ると思います。人間が、生き物達のためにもう数mだけ遠慮して砂浜海岸を作ってやれば幼魚たちの移動できる浅瀬もできたでしょう。

いくつかの都市では夢のあるウォータフロント計画をもっています。花と緑、水際フェンス、アーティスティックなタイル歩道と階段などがイラストされ、ホテルの水際の装飾のようです。水際から下は、すべて楽屋裏なのです。全体は直線的、幾何学的にレイアウトされています。一応、松を植えた砂浜が準備されています。

水打ち際と砂浜はなぜないのでしょうか?小さな生き物が生息したり仔魚が移動したりする浅瀬はなぜないのでしょうか?何よりもなぜ直線なのでしょうか。自然の海岸では直線ばかりで形成されている所などありません。岩のごつごつした海岸に直線などないではありませんか。海産物のえさとなる海中林の育成場はなぜないのでしょうか?

直線に形成するために埋め立てられた海底の生き物達が成育する場所はどこに準備されたのでしょうか?干潟とアマモ場、藻場、浅瀬などは仔魚や幼生たちが移動できるように隣接して配慮してあるのでしょうか?

日本人のいうウォータフロントは水際のラインより上だけの美観と人間側のアメニティしか考えていないのが実状です。地球温暖化が明らかとなった今は、子孫のために残すべき海を考えなければいけません。十分な食糧を供給しつづける海です。ですからウォーターフロントの視点から反対側のランドフロントを優先して考えることが必要なのです。

工学的にやりやすい直線状の沿岸構造体は多種類の魚やその餌たちにとってはあまり歓迎されないはずです。むしろウォーターフロントでは美観で嫌うテトラポッドのほうがまだ複雑な形状をしている分だけましです。デザイナーや学者達の視点を海側、すなわち魚中心に考えさせる必要があります。そうすれば自然景観に似た安らぎのあるデザインに収斂してゆくと思われます。

温暖化の進展にともなって、ゼロメートル地帯といわれるところに港湾局からスーパー堤防を作ることが提言され予算化されています。同じホームページには里浜作り宣言などと心地よい話が提案されているわりには、スーパー堤防建設時に、豊かな海をもたらす海岸構造の視点が欠落してしまっています。担当している人々の中には陸上の財産を守る視点はあっても、海を守る視点が欠落していることを示しています。早くこうした視点で提言できる能力を身につけてもらいたい。

今後海面上昇すれば、多くの地域が護岸対象となってくるというときに、今までの工学知識の延長上でしか考えられないとすると日本の海岸線の多くは、干潟が消失し、海中林も消えた海洋生命のことは配慮されない海岸線となってしまいます。悲しいことです。

 

将来、石油の入手が困難になり、石炭火力を発電の主流にせざるをえなくなれば、多くの燃えかす(スラグなど)を埋立せざるをえません。メガフロート上に火力発電所を作れば漁場形成や干潟形成ができると共に、電力供給が出来るようになります。メガフロート上に石炭火力発電所を作る技術は、その焼却灰有効利用の面で海面上昇がもたらす沿岸保護対策には必須の技術となるはずです。

水没してできるあたらしい海底は光の当たる漁場へと速やかに誘導することで災いを福と転じることができます。そのためには迅速な漁場形成の研究に取り組んでいることが大切になります。

海面より低い都市を堤防で維持するコストは大変ですし、ニューオールリンズが台風で海の底に沈んだように、天災による被害が必ず発生します。復興費用は数十兆円とも言われます。

地球温暖化によって水没する地域は、住み慣れた土地を無理やり離れて新しい都市づくりをせざるを得なくなります。予測されていることだから、行政は早めの計画を国民に提示することが必要です。

新たな潮干帯を干潟にするのか、水産業は捨てて護岸に徹するか判断しなくてはいけません。 日本は風による海面水位が世界的に見ても高くなりやすい位置にあります。台風も多いので、低気圧による海面上昇も見込まなければなりません。温暖化によって貿易風が強くなるのであれば、日本近海の海面水位は高くなりやすく、高波の防御のために、いまより高い護岸を作る必要があるでしょう。それをふまえた上でニューオールリンズにするかどうかを決めなければなりません。

自分の国で考えると見えてきません。ツバルという国が水没しようとしています。サンゴ礁の上にできた国ですから大潮では水が土地から湧き上がってきて住んでいる場所が海面下になります。 さて、国中の周りに堤防や護岸壁を作って国家が守れるでしょうか?

日本でも、海面上昇したときに、地下鉄網があるから過去の投資が無に帰すと言う議論で護岸壁を作れという機運が広がるでしょう。

さて護岸壁を形成してまもれるのでしょうか?

きっと数10cmの海面上昇なら海水浸透は防げるけれどもそれ以上は浸透防止は不可能という話になるはずです。もし、水面下になる土地に、明治以来の記録に残っていない土管が埋まっているとしたら、周囲に壁を巡らしてみても記録にない土管から海水が浸入してくるでしょう。

同じ街づくりに数十兆円をかけるのなら、海面下にならない場所に新しく街を形成する方が人の被害を防げるという意味で、より良いように思います。いったん堤防が切れれば再び数十兆円を投資することになります。 人類は、経済が自然を仕切っているのではなく、自然が経済を仕切っていることを忘れるべきではないと思います。

コストパフォーマンスだけで判断すれば、水産業を選ぶことになります。長い年月後には数々の災害を経て、結果的にはやはり水産業を選ぶことになってしまうはずですから。これは維持のための税金を拠出する国民の選択です。

もうひとつ。巨大な海洋面積が日本から消える問題です。

地球温暖化で水没しそうな沖ノ鳥島は、これまで大洋のなかでアホウドリやグンカンドリなどが羽を休める場所であったはず。こうした自然を保護するのも日本の役目です。大洋の中で鳥達が休む場所を造る目的で早急に岩を設置します。テトラポッドなどというような人工物はそぐわない。せっかくのさんご礁ですから、風景を乱してはいけない。沖の鳥島は水面下に没する前は日本国のものだから、今のうちに人工物といわれようが鳥がとまれる岩場を形成してしまいましょう。

鳥達は海から多くの燐酸などを、糞として岩の上に降り注ぎます。岩は糞をためて成長してゆきます。同時に、雨水で流れ出した燐酸成分は、サンゴ礁内の富栄養化を促進するから、自動的に石灰藻やサンゴなどの生物の成育を促進してさんご礁の上昇速度を加速します。

沖大東島などは全島が鳥の糞からできた燐酸質肥料にもかかわらず、さんご礁を維持しています。岩を置くくらいなら周囲への影響も少ないはずです。 こうした行為が許されないとするなら、オランダの国家の大半は許されないと言う議論につながります。水面下に没してからだと、日本国の土地ではなくなるため、この方面の巨大な水圏を自分のものにしたがっている中国あたりから「かってに自国化しようとしている」とクレームが来て問題が複雑化するでしょう。

 

世界では今、砂漠化の被害を受けている人々が一番砂漠化面積を広げている事実があります。彼らは生活できないから、大事な樹木をマキにしてしまいます。貧困なので根まで食べる羊を増やそうとして、残り少ない草を根絶やしにしてしまいます。

そのような地域では、そこに生活する人々の協力を得なければ砂漠化の方向を止めることはできません。 日本の漁業でも同じことがおきています。魚群探知機を使い巨大な網で魚を一網打尽にしてしまいます。手間の問題で、同じ網にかかった売れない小魚をすぐ放流することなく死にかけた状態や傷つけて放流します。

養殖漁場では、高価な魚を育てるため、その数倍の重量の雑魚やその他の食品が餌として投与されます。過剰な餌が海底に沈降して腐り、ヘドロ化します。それはやがて赤潮をおこしたり、海水の透明度を落として硫化水素の発生する貧酸素状態の海域を作り、周辺の多くの海洋生命を根絶やしにします。海洋牧場が地域経済の要となっていれば生簀(いけす)の魚が死に絶えるまでやめることはありません。

これまでの行政関係者はこういうレトリックの主張をしてきました。

「これまで商品にならなかった海藻を商品化することは良いことだ。海藻にはフコイダンがあり、ガンに効きそうだ。だからホンダワラでもコンブでもどんどん商品化して地域の活性化に役立てよう。」
ちょっと待ってください。海藻がなくなるほどに採取すれば、役に立たない海藻が実行していた海の過剰な栄養塩除去をするものがいなくなります。海表面は波浪が酸素溶解するにしても海底の酸素は供給されなくなります。それは海の濁りをふやし海底を硫化水素に満ちたヘドロにします。そして青潮と赤潮で魚が取れない海になってしまいます。最終的にホンダワラも取れない海になるのですが、それでも前向きに地域の活性化をするのですか?節度が必要です。

経済活動で藻場や干潟、浅瀬を壊し縮小してきた日本人はアマゾンの熱帯雨林を破壊し、大豆作付け面積を増やしているブラジルの人々を非難することはできません。

過去の公害のように、人間は海底までも自然の浄化力を超えた汚濁物を投下し、護岸工事や埋め立てなどで海洋生命の繁殖場所を奪っています。

鳥の鳴かない自然はおかしくなったとすぐにわかります。魚のいない海が増えていることを公害並みの重大な問題だと考える人がすくないことが問題です。

サンゴが白化し、海草が生育する場所がない状況は自然の炭酸ガスの固定力を大きく減殺します。そして何よりも海の生産力を極端に落としてしまいます。熱帯雨林のなくなったアマゾンは大西洋上に雨が降りやすくなり、雪解け水も洪水にしかなりませんから、アマゾンの将来は乾燥地帯になると主張する人々がいます。当然大豆は今の焼畑程度には取れなくなるでしょう。
同じように、サンゴや海藻がない海では、硫化水素に満ちた海底によって漁獲高は減少してしまうはずです。

温暖化対策は、浅瀬の埋め立てを許可する立場の人々や、地域の漁民の人々の協力を得ながら進めることが必要なのです。(第2章 目標は世界の観光地 参照)

 

 

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