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◇ ◇ ◇   地球温暖化防止の具体的な対策は第 1 章の風美海プロジェクト内容参照   ◇ ◇ ◇ 

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  地球史からみた日本の地球温暖化

地球が生命に対して温暖な環境を提供しているのは、海流と気流が南北の温度を均等化させる働きしているからである。

地球温暖化の課題を理解するために必須の知識がある。海水、または淡水の上下対流のメカニズムである。

海水は−1.8℃で凍りはじめる。氷は水の結晶で純粋であるから、凍らなかったほうの海水には氷になったほうに溶けていた塩類が移行して比重が高くなる。

だから海水が凍ると、表面から深海底に向かって下降流が生じる。その容積分だけ深海から海水が浮上してくる。深海の水には、生物を養う栄養塩が豊富に含まれているので日光を浴びると多量の植物プランクトンが生じ、エビに似たアミ類が大発生する。こうした食糧を求めて、多くの大型魚類や鯨などの哺乳動物などが極周辺の海に集まってくる。
北極海の表面水の塩分が何らかの原因で淡水化すれば、氷結しても水の比重はあまり変化しないために、この上下対流は起こらなくなる。

知床に到達する流氷には氷と氷の間に、濃縮され冷え切った海水がはさまって存在する。流氷が到達して、氷どうしがぶつかり合うと、こうした比重の高い冷えた海水は海底に沈降し、代わりに栄養塩を含んだ深層海水が上昇してくる。

日本では北から下ってくる親潮が南からの黒潮と合流する地点で大漁場が成立しているのは親潮に栄養塩が多く含まれるからだ。親潮は栄養塩、黒潮は温暖な水温を合流地点にもたらすのである。

淡水では、海水のように「冷えれば冷えるほど沈降流の強さが増すメカニズム」にはならない。淡水の比重は4℃のときが一番高いという性質による。湖面では氷点になる前に4℃になった水は湖底に沈んでゆく。初春や晩秋に湖内の上下流が活発化して、全体の水温が4℃に近い均一な温度になる。
淡水が凍れば表面の風によるかく乱はなくなるため、比重の軽い0℃の水が上層に居座り、上下流が生じなくなる。そのかわり表面からの酸素の供給もなくなり湖水全体に貧酸素水塊が生じる。魚などが全滅することも生じる。

 

では本論に入ろう。

グリーンランドの氷は平均厚さが2100mほどで量が多く、海面上昇への影響がおおきい。しかし本当の恐怖は他にある。

地球史のなかで北米周辺とグリーンランドは地球気候の変動に大きな影響を与えてきた場所である。北極の海に近接した広い海域は地球上で北大西洋海域だけであることに気づく。この海域は気候変動を敏感に受けて最初に氷の形成・溶解につながる地域なのだろう。

ベーリング海峡は水深わずか 50 m、巾約 100 km。海峡を通って太平洋の水が北極海に注いでいる。

暖かい上層の海水が北極に流れ込み、冷やされて氷ができ、いっぽうの濃縮されて比重の重くなった海水は大西洋側へ沈み込んでゆく。この北極で沈み込む海流はアマゾン川の水量より多いと推定されている。沈み込む海水のエネルギーが強ければ大西洋側の南下する方向だけに強く進み、世界の海流は定まった方向へ強く流れる。温暖化は北極の氷とツンドラの永久凍土が溶解する間はこの沈み込むエネルギーを弱くする。

北極の凍結エネルギーが強いために沈み込む海水量に対して、ベーリング海峡から入る海水量では足らずに大西洋の赤道周辺の暖かい表面海水が、風の力も借りながらメキシコ湾流として北上して均衡を保っている。
北米やヨーロッパ諸国が緯度の割には温暖である理由は、北極の凍結エネルギーとベーリング海峡のバルブ(調節弁)の絞り具合に依存しているわけである。

ベーリング海峡は、地球の全海流が一定方向に向けられるように、そして極端な海流量変化が起こらないようにして地球全表面が温和な気象であるように精緻に設計された温水流入制御装置である。位置、深さ、水量など神のもたらした恵みとしか言いようがない。

写真から温暖化によって北極の氷がベーリング海峡側から減少していることが見て取れる。

北極の氷の変化

グリーンランド周辺の北極の低温は、千年単位で地球全体をくまなくめぐる海流を生み出す力となっている。海流は、常時、巨大な熱を南北に移動させている空調機のようなもので、地球の全面積に穏やかな気候をもたらし生命が長期的に同じ生活の方法をとっても生きのびることができる補償となっている。

今から一万一千年前、地球が温暖化したため、北米大陸の氷河が一気に崩落してグリーンランド周辺では溶解してできた淡水によって海水比重が軽くなってしまった。数値モデルでのシミュレーション結果では比重が足りない海水は沈下できずに数10年で海洋大循環が停止した。実際に海流が停止した痕跡が地質上に記録されている。その後1000年間は地球は逆に急速に寒冷化した。この寒冷な時期をヤンガー・ドライアス期と呼んでいる。

実はこの海洋大循環のおおもとである北極における海水の沈み込みは、1980年以来すでに停止している可能性があるという報告がある(シュロッサー)。ツンドラの永久凍土の溶解やグリーンランド氷河の後退などは、北極圏の海水の淡水化をもたらしているし、エルニーニョの定着化はこの判断を支持する方向にある。エルニーニョ時には黒潮の温度が上がる。ひょっとすると日本沿岸の海域で起こっている磯焼け現象は、サンゴの白化で餌が乏しくなった南方の食植動物(ブダイやアイゴ)が餌を求めて北上している現象かもしれない。

日本の黒潮は貿易風で吹き寄せられて上層を流れる海流である。北に向かう塩濃度も高めの海流である。しかし観測結果では北太平洋の表面海水は、河川の流入(オホーツク海の流氷を含む)や降雨が多いためにやや塩分が低めと言われている。

これまで両極で沈下する海水は、表面で大気から年間0.4ギガトンほどの炭酸ガスを海底に運んでいると見積もられていた。南極での沈下分を割り引いても、海洋大循環の弱まりとともに炭酸ガスの大気中の蓄積速度は上がるはずだ。

地球はこの数年の人類の対処の仕方で大きく結果が変わるときに遭遇しているようだ。いったん限度を超えた場合、ヤンガー・ドライアス期のような人の力ではどうすることも出来ない破滅的な気候変化が起こる。

いま、もしグリーンランドの氷河が崩落すれば、温暖化から一転して急速な寒冷化への変化が起こる可能性が高い。赤道域の水分の蒸発がもたらす雲も白いために太陽の熱線の地球外反射に影響すると考えられている。しかし、その規模や影響度は何もわかっていないのが実情だ。食糧は破滅的な不作となる。10年の間に、数十億人が飢えてしまう状況となる。

その理由を説明しよう。

グリーンランドの地形が周囲の山脈によって簡単には氷河が周囲に流れないために広い真っ白の日光反射面積をもつ。これが地球の熱線吸収率に影響を与えている。急速な雪原面積減少は急速な温暖化と海面上昇と海洋大循環の停止をもたらす恐れがある。

海洋大循環の停止によって赤道地域の熱が両極に移動しなくなり、極地域の極寒をまねき、逆に両極の雪原を急速に拡大して、地球から宇宙への熱線反射が上昇して寒冷化をもたらすと考えられている。

海面上昇を不安視する人々も多い。海面上昇と地球寒冷化の関係についてかんがえよう。自分の土地が海面下になったらどうしようという不安はわかる。単なる海岸線の後退なら、ゆっくりと起こるので財産はなくなるが命がなくなることはない。

人間も含む大型動物が激減する状況が起こることも視野に入れておく必要がある。それは1m程度の海面上昇で南極の海岸線も後退してしまうことによるリスクである。

南極の氷は大地の上に乗っているので、これまでの速度以上に急激に海へ移動することはない。ところが海面が1m上昇することで海岸線の棚氷が浮き上がり、大地と氷の間に海水が侵入してゆく。すべり摩擦がほぼゼロとなってしまうので巨大な面積の氷が海上へと短期間に移動してしまうことになる。近年の南極の氷河の海上への移動速度は8倍であったことが観測されている。地球温暖化によってひきおこされた南極の氷河の移動速度は、海水面を上昇させるという南極の氷河自らの性質によって、さらに氷河の流下速度を増加させている。

南極の氷が海上に移動すれば海水面はさらに上昇する。

海上で融解する氷は海水面を淡水化するから冬に海面が凍結しても沈降流は生じない。南極でも凍結によって、深層海流の流れを後押しするメカニズムがあることは北極と同じである。淡水化によってこの力が弱まることはチリ西岸を北上する深層海流の速度を弱め、エルニーニョを定着化させる方向に進む。

幸い、温暖化で貿易風が強まるため、黒潮につながる赤道周辺の東向き海流は30%ほど強まりそうだ。この表面の海流は、弱まった深層海流を引き上げるエネルギーとして少し強く引き上げることになる。だから、南極の氷が海に滑り落ちた年とそうでない年とで交互にエルニーニョ傾向が強まったり弱まったりするだろう。

地球温暖化では熱帯の巾が南北に100kmほど広がると予測されている。当然亜熱帯地域の巾も南北に押し広げられる。これらのゾーンの海に溶解している炭酸ガスと炭酸水素イオンは大気中に炭酸ガスとして放出される方向になる。 海からの炭酸ガスの大気放出はさらに太陽の熱エネルギーを取り込み、海からの蒸発をすすめて、水蒸気を大気中へと移動させる。そのことが温暖化速度をさらに早める。

結果として気候の激変をよび、降雨ゾーンの変化を引き起こし森が消失し、草原の位置が変化して、食糧確保パターンを固定している大型動物が生存してゆく基盤が壊れてしまう。ヤンガー・ドライアス期に生じたような急激な寒冷化が生じれば、大型動物はほとんど消滅してゆくだろう。

北極側でも、海面上昇は水深が50mほどしかないベーリング海峡の水深も上昇させるから、北極へ流入する太平洋の水量も増加する。神様のバルブが少しずつ開けられてゆく。その分メキシコ湾流から北上する海水量は減少してゆくだろう。そのためヨーロッパは夏は暑く、冬は厳寒という気候へとシフトする。

北極が冬季に凍結し夏季には消失するようになれば、淡水が北極表面にとどまるため、冬季の深層海水への沈降流も減少する。そのために北極へ流れ込むベーリング海峡の流れも弱まることが予測される。

冬季だけでも北極周辺の降雪面積が広がればその白さから太陽の熱線を宇宙へとはじき返す量が増える。北極やヨーロッパ周辺が一定の白い降雪面積にまでなったときは、地球の温暖化が反転して地球全体の寒冷化への道を歩む道のりのスタートとなる。

地球は炎熱から氷河時代まで多くの温度域を経験している。だから生物は今度も何とかできるさと考えることもできる。問題はこの変化速度が生物の適応馴化速度を超えていることである。地球に巨大隕石が落下したとき短期間に気候の激変があったため、大型動物であるほとんどの恐竜は食糧の確保が出来なくなって死滅した。毛皮を持つねずみみたいな小動物が生き延びて今の人類のもとになっている。生物が生きのびることが出来るとはそういう意味では正しい。

人間でも20−30年の間に、今まで牧畜をしてきた人々が、通常の農業に切り替え、すぐさまイヌイットの狩猟生活に切り替えなければならないという変化である。しかもこの変化で生物の大部分は絶滅の危機に瀕する。赤道の南北では砂漠面積が拡大し地球上の生存可能地域が狭まるため、食糧のある一部の地域に65億人の大部分が流民としてあるいは軍隊を編成して集中するはずだ。

地球上の草本植物はそれでも人の手で適した場所に、場所をかえて植えることができるが、気温の変化、降雨量の変化などに追随できない木本植物は枯れてゆくものが多くなってしまう。

さんご礁に頼る漁業はサンゴの白化で壊滅するから、漁業資源はいわしなどの植物プランクトンをとりまく動物プランクトンを餌に出来る魚だけになる。すなわち、人が頼れる栄養確保は、草と植物プランクトンに限られてくるだろう。植物プランクトンは大部分がマリンスノーとして深海底に沈降する。

もし光が届く海底面積が広ければ、この植物プランクトンを摂食する動物プランクトンが沿岸で増加し、タイやヒラメなどを増産させることが出来る。

サンゴ礁が生じる期間は100年単位と長いため、3年程で出来上がる海藻の海中林で生物種の多様性を維持しつつ、海産物に頼りながら温暖化の大変化をしのぐやり方が、温帯〜亜熱帯に属し、農地面積の少ない日本では最もふさわしい準備になると思われる。すなわち、何らかの経済的な方法で光る海底面積を拡大すればよい。貴重な植物の残る山を崩して海面下埋め立てをするような愚は避け、毎年多量に排出される産業廃棄物と建築廃棄物を光る海底作りに当てることが最も現実的な対応だろう。

既存の光る海底を、経済的であるという理由で埋め立てるようなおろかなことをしてはいけない。温暖化が進行している現在では光る海底は日本人にとって宝石であり、子孫の食糧維持の切り札なのだから。

海洋大循環のエネルギー供給は北極だけではない。

南極での海水の沈み込みの力も海流を生み出している。南極周辺海域は陸地で閉ざされていないので、コリオリの力でグルグル南極周辺を回る海流を生み出している。南アメリカと南極の間のドレーク海峡で海流が絞られていて、なおかつ北極からの深層海流がドレーク海峡東側で合流するため押しとどめられて、一部の深層の海流は北に進路を取り、ペルー海流として赤道近くにまで北上する。ここで北アメリカの西海岸を降りてきたカリフォルニア海流と合流して海底地形上の理由から海面に上昇する部分が出てくる。深層海流の湧昇が強いときにはペルー沖は巨大な漁場となる。

この湧昇流の強さは、エルニーニョとかラニ−ニャという名称でよく知られている現象を引き起こす。これらの現象は、北極から沈降する海流エネルギーと南極から沈降する海流エネルギーのバランスで変化し、西に向かう貿易風の強弱で起こる南北の赤道海流の強さなどでも変化する全地球的な現象を地球の一箇所の現象観測で表現したものである。

地球温暖化はこの海流の流れを弱め、地球気温を南北で均質化している巨大な熱量運搬装置の機能が働かなくなる作用をする。

近年、ベーリング海では人工衛星観測によって円石藻の発生のために広域な白潮が観測されるようになった。さんご礁の海の色になる。円石藻の増殖は、石灰化の式が炭酸ガスを発生するので炭酸ガスの発生源になると主張する学者もいるが、間違いであろう。

CaイオンがCaCO3として取り込まれる石灰化反応では、炭酸ガス CO2 が出てくる式になる。

Ca2++2HCO3→CaCO3+H2O+CO2
だからサンゴの成長は大気中CO2を増やすという理論展開である。ここで炭酸水素イオンの供給源はどこからかという大きな見落としがある。光の当たる海水中は海表面域だから大気中と深海側の両方とも可能性がある。深海側から炭酸水素イオンが供給されるのであれば、海水中の炭酸水素イオン濃度はどんどん減少してゆくことになるが、実態は平衡を保っている。どういう供給ルートを取ろうと、大気中の炭酸ガスが溶解することで炭酸水素イオンが平衡していると考えられる。

最初の炭酸水素イオンのひとつは確実にサンゴや円石藻の外殻となって固定される。水中から炭酸水素イオンのひとつが減って炭酸水素イオン濃度が下がる。大気と海水の平衡が炭酸ガスの吸収方向となり新たな炭酸ガスが大気から溶解し炭酸水素イオンとなる。あるいは石灰化の段階で発生したCO2はまだ海水中にあるから、炭酸水素イオンとして捕捉される。この反応ででてくるCO2が大気中に放出されてもその量に見合うCO2が海水中に大気から再溶解するから、収支としては、サンゴや円石層の外殻になった分だけ大気中から海に吸収固定している。

2個の炭酸ガスが海水に溶けて2個の炭酸水素イオンとなる。ついで1個の炭酸ガスぶんが炭酸カルシウムとして円石藻の殻を形成し、残りの1個分が再び炭酸水素イオンとなると解釈すべきである。円石藻は海水の炭酸ガスを吸収している。円石藻は沈降して炭酸ガスを深海に運び岩石化する。すなわち円石藻の殻重量に見合う炭酸ガスを大気中から除去してくれているはずである。

モル比を入れた化学式を書かず石灰化の式は炭酸水素イオンから炭酸ガスと炭酸カルシウムができるから、地球の炭酸ガスは円石藻で増加するという暴論を吐く人たちが出ていることは科学の理解レベルの危機を示している。

一般に気体物質は海水温度が下がれば溶解する。したがって、この気液平衡の関係式から地球上の海洋からの炭酸ガスの吸収と放出の分布を算出すると赤道域が放出、極域が吸収するという分布図ができあがる。実際の測定でも、太平洋の夏場は炭酸ガスを放出している。

この事実と、円石藻が炭酸ガスを吸収除去していることとを同じに議論してしまって、混乱が起こっている。夏場は気液平衡の原理で海水から炭酸ガスが放出されているが、同時に円石藻は石灰化の原理で、海中から炭酸水素イオンを海底へと除去してくれている。円石藻が下げてくれた炭酸水素イオン濃度によって、夏場の海水からの大気放出量が抑制されているのである。

単純に物質保存則から考えても、円石藻が炭酸カルシウムとして海底に移動させた炭酸ガス部分は大気から減っている。また、水深4000mを越えるあたりで炭酸カルシウムが溶解するからといって、その海水が表面に出てこない限り炭酸ガスとしての大気中放出は少ないはず。円石藻の殻が動物プランクトンの糞で凝集させられているときには、有機物でコーティングされている可能性が高い。表層で円石藻になれば、深層で溶解したとしても、大気中の炭酸ガスは深層へと移動しているはずだ。

 

石灰化によるpHの低下が懸念されている。低pHにより、炭酸カルシウムでできている地球上のさんごの骨格が溶解してさんご礁がなくなり、海の光合成が止まるため、地球温暖化が加速されるというわけである。pH低下のほうは、化学式的にも、また小規模な実験でも確認されている。

ただpH低下説でまだ説明できていないことがある。
地球上には過去の生命が大気中の大量の炭酸ガスを石灰岩として石灰化の式に従い地中に封印してきた。カルスト台地や中国の桂林の景観が石灰岩の大地の例である。過去に巨大な量の炭酸ガスが海の生物により石灰化したわけであるから、現代の海のpHはもっと低いはずであるが、実際にはそうなっていない。

小さいスケールの実験でさんご礁がすべて消滅するという説をとなえる前にもっとやることがあるだろう。たとえば生物が光合成で弱酸塩をつくり、水素イオンを取り込むことも考えられる。淡水湖では植物プランクトンが光合成するために有光層ではアルカリ性、深層部では酸性になっていることが確かめられている。

また大地から供給されるCaイオン以外のアルカリ土類金属やその他の金属の及ぼす影響なども評価に加える必要があるだろう。

円石藻の炭酸カルシウム生産量は年間で約1ギガトンと見積もられている。人類が排出する1年間のCO2量は、約7.3ギガトンといわれているからたいへんな量である。

円石藻は黄色の葉緑体をもつ植物だから、その細胞質として炭酸同化作用によって海中の炭酸ガスを有機物にして体内に取り込んでいるので、そちらのぶんも深海に移動させていると思われる。これらの藻類が死滅してメタン発酵すればメタンハイドレートができるのかもしれない。

ただ、こうした植物プランクトンの細胞質部分はほとんど海の表層部分で動物プランクトンに捕食されて動物プランクトンの細胞質に変化し、植物プランクトンの殻だけが糞塊として粒径を増して、より沈降速度が増加して深海に沈んでゆくという説も有力である。こうした生命反応は高々海面下数10mの深さの光のある薄い層で行われている。光底創りがいかに大事かわかっていただけたとおもう。

ベーリング海の表面で増殖した円石藻の一部はベーリング海峡をとおり北極海に流れ込み、北極海の低温により生活力を失い大西洋で沈降すると考えらる。実際に大西洋の海底にはチョーク様の円石藻の層が堆積している場所が存在する。

 

いっぽう大気による熱の南北への拡散は台風などの巨大な低気圧で生じる。海流が停滞し海水温が上昇すれば台風の頻度も強度も強くなる。

海水温の上昇と台風の発生のコンピューターシミュレーション結果が発表されて、地球温暖化はむしろ台風を減らすという結論もでている。しかしシミュレーションは、地球上の温度勾配や湿度勾配の存在抜きに結論すべきものではない。そこにエネルギー勾配ができる以上はそれを抜きにしたシミュレーションはあまり意味がないだろう。 むしろ海水温度が上昇しているアメリカのカリブ海沿岸の台風が巨大化している事実のほうに説得力がある。さらに発表どおり極相として台風が消えるとしても、極相まで至る過程で巨大な台風が発生しないとはいえないだろう。

電力中央研究所試算では、地球温暖化によって北米東海岸が特に顕著な海流の減速を示す。
カリブ海のハリケーンが巨大化したのは、グリーンランドから南下する冷たい水の量または流れが変わって湾内の水温が上がりやすくなったことと無関係ではあるまい。
21世紀末には黒潮の流れは現在より約30%速くなり、海水温も約3℃上昇するとの予測がある。(海洋研究開発機構)一方で黒潮の流速は遅くなるとの予測もあるが、日本近海の海水温の上昇方向は避けがたいようだ。
海水温度が高い状態では、大気に登る水蒸気の量が増加し、冬季に寒気が広く日本を覆えば積雪量はむしろ増大する。このときシベリアから南下する乾燥した強い冷気によって、一時的な海水表面温度は気化熱を奪われるため平年温度より低下する。オホーツク海などの温度が平年より高ければ日本海の表面下の海水層は暖かいと判断できる。こう考えるとよい。夏に打ち水をした道路表面が平年温度より下がっているといって、道路の下層まで冷えているわけではない。

地球温暖化は日本のようなロケーションでは雪を減らすわけではない。

我々の大地には、周期的に晴れや雨の日が訪れてくるから、植物が繁茂する。地球温暖化はこの周期性をこわして、雨ばかりの地域と晴ればかりの地域を固定化してしまう。大気の最上層にある赤道と極地域との間に見られる南北熱循環の変化による影響である。

そのわけは、極地域と赤道地域の南北の温度差が狭まるために生じる。温暖化によって極地域の雪が解けてしまうと極地域がより暖かくなることは確認されてきた。いっぽう赤道地域の気温はそれほど上昇しないから、南北の気温差が小さくなる。これまでこの南北の気温差が大きいため、極側に流れる熱量のエネルギーの強さで偏西風の蛇行が生じていた。冷たい空気と暖かい空気の日が交互に訪れていたわけである。

ところが南北の温度差が狭まると蛇行させていたエネルギーが小さくなるため、偏西風が、一定した固定した流れになってしまう。雨の降らない地方と、雨ばかりの地方が固定化しがちなのだ。当然、今まで森を形成していた植物は干ばつか日照不足で枯死してしまう。農業も気候の変化に合わせて変えなければならない。

 

あまり問題にされていないが、ツンドラの永久凍土に保有されている水が逸散し始めている。米国カリフォルニア大学が行ったNASAのランドサットが撮影した画像の経年比較研究では、北極圏であるシベリア西部の湖の面積が6%減少したことを確認し、個数でも100以上の消滅を観測している。
ツンドラでは、温暖化で氷が溶解した場所にある腐植化した泥炭層は、分解を早めて m2 あたり数kg のレベルでメタンまたは炭酸ガスとして空気中に消失している。

例年以上の淡水が、北極海とオホーツク海に流れ込んでいるわけである。北極海では世界をめぐる海流を弱めているし、オホーツク海では親潮の流れに影響しているであろう。

もうひとつの影響がある。ユーラシアプレート上のツンドラ重量が毎年大量にコンスタントに消失して、拮抗するプレートとの重量バランスが変化している。ユーラシアプレートを押し込んでいるインド大陸の周辺に巨大地震が多発しているのは、この影響が出始めたものと推測している。

プレートの境界に位置する日本は、整列しなおしているプレート間の拮抗がおさまるまで場所、時期共に予測できない地震の対応をしておかなければならない。体感地震が少ないといわれていた九州や四国、北海道などの地震が起こり始めている。
日本での地球温暖化を考えると、大雨・大雪と巨大台風、地震および干ばつの対策が主となるだろう。水面上昇はすぐに恐れる事はない。

地球温度が2℃をこえると、全地球的なさんご礁の白化で、炭酸ガス吸収のメインを占めている海域の炭酸同化作用が大幅に減速してしまうというシミュレーション結果が出されている。それ以降は急速な温暖化へと突入することを意味する。この温暖化が数百年間の変化であれば、別の場所にさんご礁が形成されて問題が回避される可能性がある。2026年〜2050年が2℃到達の時期にあたるようだ。あと30年程度の話である。 NASAは、地球温度が1℃上がれば、地球の熱線放射が平衡を保つ限界をこえてしまうと発表した。

円石藻など別の石灰化する植物プランクトンの増殖が進みサンゴの代わりをしてくれるかもしれないと多少の希望もあるがそれでも全地球的なサンゴの白化は温暖化促進を大きく後押しするだろう。一般的に表層を流れる海流には栄養塩が不足しており、栄養塩の豊富な深層海流を湧昇させることで、こうした植物プランクトンの増殖を促すことが出来る。
海底地形の変更でこうしたことを行うことが出来れば、自然エネルギーを利用した積極的な炭酸ガス低減のシステムを生み出すことが出来る。希望がないわけではない。

温暖化による影響とは雨が降りすぎたり、降らなさすぎたりすることを意味するから、こうした大きな気候変化は淡水供給量にも巨大な変化をもたらし、すぐに世界中の食糧生産低下に結びつく。水産資源も各国が保護にまわり、海の国境線は常に国家間の緊張が存在することとなろう。自由経済をアメリカが維持してきた今までのような体制は、気候変動で簡単に壊れてしまう代物である。フリーハンドで海外の食糧を購入することが今以上に困難になる方向にある。

 

日本人にはピンとこないが、65億人になった地球はいま、利用可能な淡水が異常に不足している。工業も農業も水がなければ発展させることができない。

1900年からの人口増加カーブを外挿すると2035年には地球の人口が100億人を越す計算になる。今年生まれた子供たちが成人した頃には、国家間で人々が色々な資源をとりあって争う時代に入っている。
すでに日本では金属盗難の事件が急増しはじめた。電線が切り取られたり、墓場からステンレス皿が多数盗まれたり、各地の村から多数の半鐘が盗まれている実状はすでに、国家間の資源争奪が熾烈になっている証拠である。

地球は100億人という人口をとても養えないわけだから、それまでに多くの人口増加抑制原因が働く。考えられるだけでも次のような多くの出費増が強いられることになる。

  • 淡水供給量
  • 食糧供給量
  • 気候激化によるエネルギー使用量増加
  • 輸送治安の確保費用
  • 他国侵略の抑止費用
  • 流民流入防止費用
  • 流民受け入れの社会費用
  • 国内治安維持費用
  • 地球温暖化による巨大台風・豪雨・豪雪・地震等の対策費
  • マラリアや鳥インフルエンザのような新規疾病対策費
  • 治水、造水など貧困国への援助

日本はこれから30年の間に、政府の不要な歳出を締め出し、借金を返し、すでに現在でも値上がりをはじめている食糧やエネルギーなどの自給をふやし、国防費用も負担するプログラムが練られなければならない。何とかなるだろうというのんびりした態度をとっておれるほど、あまり時間はない。

過去にローマクラブが石油資源枯渇によって地球的な経済危機が訪れると主張したが、その後の油田発掘や省エネルギー技術の発達で、幸い予測どおりにはならずに済んだ。そのことを思い出し、今回の地球温暖化も一部の学者の売名行為だと楽観的に考えている人たちがいる。

ローマクラブの時との違いは、予測ではなくすでに人間が大気中に吐き出してしまった CO2 による温暖化の影響の話なのだ。炭酸ガスを始めとする温暖化ガスの問題は予測の問題というより物理の性質の問題である。海水や樹木にどう吸収されるかという点で充分な知識がなくそこだけが予測の問題なのだ。すでに、台風や豪雨、豪雪など様々な事件が世界中でおきている。多くの人がよりよい生活を求めれば、その傾向は必ずいまより増加・拡大する方向でしかない。
いまより良い暮らしが眼前にある国家は、中国やインド、ブラジルといった巨大な人口を擁している国々である。食糧や、エネルギー要求速度はこれまでの先進国とは比較にならないスピードであることが予想される。ローマクラブの判断に近い領域とは、炭酸ガスにより、さらに変化速度を増すという破綻までの時間の予測の部分である。

人間の経済活動がもたらしたものは、地球の平衡をたもてない人口増加と地球温暖化を生じさせた。いま起こっていることは他の生物に比べエネルギーを使いすぎる(=生命維持エネルギー効率の悪い)人間が増えすぎて生じていることなのだ。人口問題は切り離して考えてはいけない状態である。恐ろしいことであるが、地球上の人口が減少しないと地球は気候的に平衡に戻せない状態にある。つい先ごろまで、東ヨーロッパ、アフリカで起こったジェノサイドが、もっと人口の多いアジアで今後30年の間にいつ生じてもおかしくない状況である。
こうした、ジェノサイドの特徴は、単なる民族内の闘争ではなく、昨日まで隣人として仲良くしていた人々が突然他人の家の財産を奪い、家屋に放火し、隣人を殺人しレイプするような特徴をもつ。理由は過去の不平等など色々こじつけられるが、不平等を是正することよりは、そこで行われることが他人の生活基盤の奪取であり、他人の殲滅である特徴をもつ。権力者となった者が食糧を国民に分かち与えることより、自分達グループの財産にする行動をとることで極端な貧困が出てくる特長を持つ。東チモールなどはこのカテゴリーに入るだろう。

飽食の日本人にはわからないが、すでにたんぱく質源の不足も顕著である。アマゾンの熱帯雨林も大豆などを増産してより豊かになりたいという人間の経済的欲望から、急速に消失する方向である。逆戻りはないだろう。

日本人は、ブラジル人やそこに投資しているアメリカ人だけを批判できない。ウォーターフロント開発と称して、多くの地方自治体が沿岸の海藻ゾーン(藻場、あるいは海中林)をどんどん埋め立てて、生命の少ない海にしている最中である(第3章を参照)。地上の森林地帯と匹敵する光合成能力を持つ場所を地域開発という名目でつぶしているのである。

ここに地球温暖化防止の重要な課題がある。ただ温暖化はいけないと説得しても、森林破壊で経済力を向上させている人々の行動を止めさせることは出来ない。温暖化防止すれば地元の人々が豊かになる具体的なアイデアと事例を提示することこそが今求められている。たんぱく質源は大豆のほかは海から得るしか拡大の方法がない。人類に役立つ技術とは今、海洋開発技術節水型商品の開発である。狭い水槽や生簀(いけす)での養魚技術ではなく、大洋と自然の摂理を利用した魚群の総量拡大技術である。

 

いざとなったらアメリカが本気を出して何か解決策を実行してくれるさと考える人々がいる。しかしアメリカはそう動けない事情を抱えている。

超借金国のアメリカは、世界の基軸通貨としてのドルを持ち、情報処理能力の圧倒的差を利用したグローバリゼーションで借金の金利以上の利ざやを稼いできた。それがアメリカを破産させずに支えている力である。国を維持するという名目で、国民に借金を押し付けて、一部の人々に金が流れる仕組みを作った国である。ごく一握りの人たちがその利益を得ている。その金はマネーゲームに流れている。

「自由と民主主義の保護」を旗頭にするアメリカの本音は、世界の警察を続けなければ、自由貿易とグローバリゼーションから得られる金利は稼げないという点にある。貧困で貿易制限する世界中の国をテロ国家といいつつ軍隊を派遣しつづけるだろう。
しかし、グアム移転費用を出せと日本にいい始めたことにも分かるように、すでに派遣費の限界に近づいているので日本などに移転費用など軍事費の肩代わりを求め始めている。歴史がおしえるとおり、軍事的弱小国は、強国に軍事協力と貢物を要求されるのである。
アメリカは、今の収益構造を維持するためには世界最強でなければならないため、巨額な軍事開発費は予算化しても、地球が温暖化していることは世界で一番良く分かっていても、地球温暖化防止費用など無駄な費用は出したくても出せないのだ。

それは、中国が京都議定書に参加しない理由と同じである。国内に巨大な人口を抱える中国は、国民の不満を抑え、反乱を防止するために経済力向上を余儀なくされ、他国を威嚇し影響力を行使できる力として軍事力拡大にはしっているのに「そんなことはやっちゃいられない」が本音なのだ。しかも、北部の砂漠化と干ばつ、南部の大洪水と地球温暖化の影響をモロに受けていてもである。

中国やインドはいま、最大の人口を持つ国家ゆえに、地球温暖化による食糧不足や治安悪化の最先端を走らざるをえない国となっている。
これらの国の破綻は、直ちに日本に対して政治・経済上の巨大な影響を及ぼす。1億人しかいない日本に数千万人の難民が入り込もうとすると考えると、治安維持する案だけでも国家予算が消えそうだ。

平和が保てない場合、政権が不安定で国家間の約束事が守れなくなる方向に進む。どの国も自国だけ有利になる施策が優先されるようになり、日本の貿易立国の条件はかなり厳しいものとなる。
歴史の中で民衆が帝国を支持した理由は、強い軍事力がないと民衆の生活基盤を他民族にうばわれるからであった。イランが核保有を主張する理由も、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮などが核保有している中で自国が生きのびる方法として核が必要と認識しているからに他ならない。温暖化による地球規模の気候変化によって、ノーモア・ヒロシマの願いは、食糧危機一つで掛け声と変化し、こういう国がふえてゆく。

大幅に軍事力強化し始めた中国は自国のエネルギー資源の確保の都合で日本近海の石油資源探索を始めた。民族が生きのびるためには国際的な不法行為でもやり始めている例だ。中国はいまのところ戦争で日本を制圧するつもりはない。他国領域に平然と潜水艦をとおしながら、他方では政治家や民間外交で融和活動を行い日本の世論分断を図って国の政治方向を混乱させる方向をねらっている。中国政府がおこなっているのは日本の行政指導力の弱体化をはかる策である。さらに海外の政界ではロビー活動を盛んにして、慰安婦問題を取り上げさせ日本の国際的影響力を落とすことに腐心している。ゆっくりと日本の国際的地盤低下をねらう作戦を継続させている。

日本人はイスラエルとパレスチナの関係から、抑圧されているはずのパレスチナ内部でハマスとファタハがいがみあう状況が何を意味するかよく考えないといけない。中国が仕掛けているのは日本をパレスチナ状態にすることなのだ。日本の一部の政治家や民間団体に対して行っている中国政府のほほえみ政策を日本人が考えるような平和希求の願いかどうかをよくみきわめて行動する必要がある。一般の中国の人々とは仲良く、しかし中国政府の策には注意深くなければならない。それが温暖化が経済に影響を及ぼし、もたらしつつある現状である。

日本の中で軍事力を強化すべきという圧力が大きくなっている理由は、こうした地球規模の気候的、および人口増の影響が国を動かし始めていると認識する必要がある。それは経済をも否応なく巻き込む巨大な政治の変化と認識すべきだ。平和が続いた日本人は危険なことに経済がすべてをしきっていると考えるようになった。
川の流れが洪水で変わって都市から離れただけで水運ができなくなり、メソポタミアのウルクという都市(=経済)は消滅した。その洪水原因とて、ヨルダン周辺の過度な森林伐採による自業自得だったのである。

大自然がすべてを仕切っていることを忘れてはならない。

日本は地球温暖化防止技術で世界をリードすればよい。現在の世界の民族主義の高揚は宗教という求心力を利用しながら、温暖化の進展と共に強力になるだけである。 EUEU 内だけで貿易を始め、アジアがアジア内の一定国家間だけで貿易を始めれば、自由貿易がやりにくくなりグローバリゼーションによる利ざやは期待できなくなる。いずれアメリカは経済的に成り立たなくなり路線変更しなければならない。今のままの勝ちパターンを成功体験としている間は、アメリカは武器商人となるしかない。

ミニアメリカとして成功してきた日本は、同じやり方のこの成功体験におぼれていては、軍事技術がないため早く倒れてしまう。アメリカの軍事技術に見合うだけの世界に必要とされる技術を体得しておかなければならない。いまアメリカの軍事予算並の規模で海洋開発に着手しておけば、その時点では地道に技術開発してきた日本の温暖化対応技術を世界中が必要としているはずだ。

過去に、地球は巨大な気候変動時期に、生物種の急激な変化や、文明の発生(生存淘汰と知的発達による)と衰退をその歴史に刻んできた。少なくともヒトという生命も含めた急激な生存淘汰の戦いが始まっているのはたしかだろう。
地球温暖化という大自然変化は、これまで人間が体験してきた、地球の再生能力の範囲内の話とは異なった次元で理解されなければならない。その変化は、過去のエネルギーの消費速度が、炭酸ガス吸収して平衡させてきたメカニズムを超えたことから生じている。しかも、地上のあらゆる生命の種類を減少させたことで炭酸ガス吸収の量まで減少させてよりバランスがとれない状態にしたことが大きな原因だ。人口が増えたことで、その生命たちが行ってきた再生のメカニズムを破壊したことによる変化なのだ。

その破壊はとめどなく続いている。土地開発、沿岸干拓などと前向き用語で、実は炭酸ガスを少しずつ地中に吸収、蓄積してきた森林の破壊やサンゴ礁、海中林などの埋め立てをしてきた。森林破壊と沿岸埋め立てなどの開発行為は公害のジャンルにはいる犯罪行為と認識されなければならない。経済からの発想だけでは人類が戦争しあい、人口を減らし、地球の再生産力の範囲になるまでこのゲームを続けるだろう。この巨大な変化はサルからはじまった人類にとってはじめての経験である。

砂漠地帯の羊が砂漠面積を拡大しているのと同じメカニズムで、地球上の人間が元手の資源を経済の発展という理由で消費し尽くして、生存のための資源争奪戦争を始め、技術を発展させた国が次の時代の覇者となり、地球上に生存できる人口にまで減少してようやくおさまるのが人類の歴史の教えるところである。
そのとき、最後の覇者は、過去の生命が蓄積したぶんは取り尽くされた後で地球上に年間に太陽が生み出す海の藻類などの資源以上は何もないことに気づくだろう。 海産物の育成と海洋開発の技術がこの大変化の波をのりこえる最大の良策である。

 
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  サハラに植林するより漁場を作る方が確実だ

サハラ砂漠への植林を夢見る人は多い。(注1)

しかしそこは、風にによる砂の流動、日中と夜の過酷な寒暖の差、ほぼゼロに等しい年間降雨量という植物の生存とはかけ離れた世界である。地球温暖化防止のためにサハラに植林すれば、維持の費用と淡水の製造エネルギー消費でもっと温暖化を加速してしまう可能性が高い。

しかしちょっと視点を変えればもっと地球に優しいやり方がある。別に淡水でなくても、海水で植林効果をあげればいいのである。
アフリカ西岸には寒流が流れている。砂漠の中に海を作り、いったん砂漠地を回流させれば温度を上げた海流を作り出すことができる。
潮の干満の差で水門を開け閉めして、海流を作り出す。局地的にサンゴの生育に適した暖かい海を作ることができる。

サハラ砂漠には無尽蔵の砂がある。海岸線にメガフロートを浮かべ、ベルトコンベヤーで砂を海に埋め立て、漁場を作れば、たんぱく質資源を供給できる。その電力は風車が受け持つ。

陸地の砂地を削り、海面下数m掘り下げておいて、ほりあげた砂を海側に埋め立てる。海と掘削地をつなげば、陸と海で2倍のスピードで漁場を形成することだってできる。掘削地は凸凹でかまわないのだ。
当初の漁場開発に援助すれば、あとは現地の人々が数百年かけて、自分達の力で少しずつ海の面積を広げてゆけばよい。

漁礁は岩砂漠から岩石を運ぶか、巨大な凹面鏡の焦点を砂漠表面にスキャンすると表面がガラス化するものを利用できるかもしれない。

出来上がった漁場にはサンゴが生育するから炭酸ガスを固定し酸素を供給してくれる。

それは海の中に作った森である。地域を選ばない海水温度差発電

もし、海水温が30℃を超えない技術が開発できて、新鮮な海水が流れる工夫さえ出来れば、サハラ内陸に水深の浅い海を形成するだけで、サンゴ礁が形成され、植林したのと同じ効果をもたせることが出来る。さらにその上漁場まで手に入れることが出来る。その国家を豊かにし、その海は周辺の砂漠地の環境を緩和してくれるだろう。

30℃以下にこだわらず、深層水を単にサハラの海に回流させて海水の温度を上げて放流するだけで、放流先の海域には植物プランクトンが増殖し漁場が出来るはずである。
温度を上げるだけのばあいなら海面の干満差を利用して少ない動力で海洋深層水を導入できる。海水の取り入れ口の先を深海にしておいて、サイフォンの原理を利用すればよい。

佐賀大学では海洋温度差発電(OTEC)の技術の研究をしている。OTECは発電と共に淡水を製造できるシステムにできる。得られるものは電力と 栄養塩が豊富で低温の海洋深層水と 淡水である。

3℃の深層海水や、50度を越すような温海水ならば、配管中に生物が繁殖することがほとんどなくなるため、分解してメンテナンスする頻度がかなり低くなるだろう。維持への配慮が必要な低開発国に設置するには必要な要点である。

 

白化が起こり始めた海水温上昇している世界中のさんご礁地域にはこの技術でサンゴ礁海域に栄養塩と低温海水を導入することで、白化を防ぐことができる。同時に栄養塩の導入により、よりプランクトンなどの増産が図れる。サハラや赤道近傍の海洋開発にはぴったりの技術ではないか。

栄養塩濃度でサンゴと海藻との存在比率が変わるから、研究を継続して管理技術を習得する。温暖化が進行した将来の日本では、その技術は経済力の基盤となってくれるだろう。

技術を深化させるために、まずは日本で地球温暖化による白化が起こり始めた沖縄、奄美大島などの地域で実験を開始し、同時に漁獲の逓減を防止できると思われる。
低温の海洋深層水を放流する必要から黒潮の上流がわにセットする必要があるから電力も水も無い南方海域の開発には必須の技術であろうし、他国より早くプラントスケールの実証技術にしなければならない。台風の多い海域で、「メガフロート上の構築物が、多くの台風を切り抜けることの出来る技術」を獲得することが目的の一つである。

さんご礁を発達させることが、海面上昇による島嶼埋没防止の経済的解決法になる。単に国防上の技術という認識ではなく、九州、四国、太平洋沿岸地域の漁場保護をかねた経済浮揚の基礎技術という認識が必要だ。

なにもサハラの海作りや都市廃棄物による漁場形成の費用は、日本がODAですべてまかなうことはない。世界中に呼びかけて資金を募ればよい。技術の実績さえあれば、世界は動くだろう。
先進国は産業廃棄物の国内処分に困っている。メガフロートにゴミ輸送船が横付けできれば、日本の技術がそのまま適用できる。開発途上国は、自国の海を提供して、埋め立て料を徴収する形で漁場形成できる。
日本が自国内で埋め立て事業を実施していれば、「わが国家をゴミ捨て場にするのか」という反感も薄らぐだろう。

(注1)
サハラ周辺部のサヘル地域は、過放牧と燃料用まき伐採での砂漠化であるからサヘルでの植林は継続すべき。
        
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  温暖化で沈んでゆくモルディブの人を助けよう

モルディブやツバルは海面上昇のため国家が消えようとしている。メガフロート内に居住区を作れば、津波や台風にも恐れることはない。住んでいた土地はそのまま漁場なのだ。
モルディブ以外にもまだ水没の危機に見舞われている国家は多い。水没した国家の土地は豊かに日光を受ける漁場になるのである。
日本はこうした国家を支援しながら、海洋開発の技術を深化させればよい。

地球温暖化時代の海洋研究は、日本国内の海洋研究だけでは不足である。日本の海がより亜熱帯の海の環境へ変化してゆく方向にあるのだから、視野は亜熱帯や熱帯の海洋知識が必要とされる。支援とセットで研究所を置かせていただくことは無理な願いではないだろう。

メガフロートの上は野菜工場や畑だってできるだろうし、淡水を作り出す技術だってすでにある。
生活のためには風車による電力が供給されるし、ゴミ処理施設で少しずつ埋め立て、陸地を増やすこともできる。それはモルディブの人々にとって、大いなる希望でもあるだろう。水面下になった国家は間違いなくサンゴの力で上昇している。いずれ地球が冷えればより広い国家になって出現する。

早く手をさしのべれば、日本の技術力として蓄積される。それは陸上での食糧確保拡大が難しい現代においては世界で必要とされる技術となるはずだ。技術は習熟することで深化される。早く着手した者は多くの情報と特許を含めた諸権利を獲得する。

淡水タンク一つを例にとっても、海上都市では、陸上のようにコンクリートや鋼鉄製のタンクを作るのではなく海中にビニール製の区画を浮かせたものだけになるかもしれない。

こうした基礎技術から、将来の海上都市の具体的なプランが派生してくる。台風などを経験して海上都市での淡水の確保はどうあるべきかとか、海域を汚さないためにどの程度の廃水処理で何人ぐらいまでが扶養可能かとか、人が海上で日光や緑をどのように希求するかとか、エネルギーミックスはどのようなものがベターかとか、海上にふさわしい産業とはなにかといったものが見えてくる。

海底都市計画を夢見るひとびとも多い。海底都市は宇宙都市と同じく、完全な気密性、都市をおおう素材の完全な均一性、ミスの無い人間の操作、およびおそらく数万人を異常時に数分間で安全に脱出させる方法を前提条件にするアイデアである。

経済性や実現性を考えれば海上浮遊都市のほうが安全性はかなり確保しやすい。海上浮遊都市では、いくつものメガフロートをユニットとして連結するから、そのすべてが同時に気密性を失い直ちに沈没する可能性は少なくなる。パニック時の人間の行動は、海上浮遊都市のほうがはるかに平静に戻りやすいはずだ。

また、地球温暖化傾向の中では、都市内部の大気を快適に保つにはクーラーユニットをいかに少ないエネルギーで稼動させるかが重要なポイントとなる。メガフロートのすぐ下には常時冷蔵庫と同じ温度の冷たい海水が豊富に存在するから、ファン駆動だけで気温のコントロールができる。これは持続型のエネルギー利用方法であるし、何よりもエネルギー消費量に多大な影響をもたらす。居住空間が暖気と冷気の界面にあるところからくる利点である。

宇宙都市計画の夢は果てしないが、一人の人間を大気圏外にだすだけでも多大なコストがかかる。居住するには資材を地球上に頼るかぎり、人間より重い資材を運ぶコストが膨大になる。しかもその資材でつくった設備は永遠に壊れないという不可能な条件を前提とする。地上がすみにくくなって宇宙に住むことのできる者達は、一部の資本家と宇宙都市を支える選ばれた技術者たちとなるだろう。

行くことはできても、資本家達が富を集めてきた条件は、地上の富をいくら集めてもよいとする資本主義社会が前提となる。地球の自然が生み出してきた富をフリーハンドで無秩序に集めるシステムで集めることのできた資本は、宇宙都市内では調達しようがない。働かずに富を集める人間の存在を許容する資本主義自体が宇宙開発では成立しないのだ。そこは人体の各器官のように、すべての人間は最も効率のよい作業をする者達だけが組織化されて生きてゆける空間となる。がん細胞のようにエネルギーを消費し、肥大して器官を壊す存在があれば、すぐに全体の生存許容限界を超えてしまう。

「我々は宇宙に最初に足を踏み入れた。だから月や火星は自分の国家の土地である」という感覚は捨て去るべきである。行くだけなら現在でも可能であるが宇宙都市計画は国家連合でなければ達成できない程度の負担がのしかかる。

次世代が日本の現状以上の経済力を持ち、次の次に起こるだろう宇宙開発時代にトップランナーになれるための条件はなんだろうか。その最も現実的なステップは、現在の地球温暖化を、海上都市と漁場開発力で世界の役にたつことでしのぎながら、経済力・防衛力を保つことである。

地球の気候が厳しいものになった場合、土地を離れ温暖な海域への移住もありうる。夢物語かどうかの判断の根拠がやってみたことのなかから出来てくる。そういうことこそ企業ではなく国家が企画すべきジャンルなのだ。

そして初めにやることで手を差し伸べる国家として世界から尊敬される国家となれる。

 
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  海洋牧場より海洋回復力を増大させよう

これまでの海洋牧場は、自走ブイで音波の囲いを作り牛や馬のように魚を飼うといった生簀(いけす)養殖の発想で考えられている。

このアイデアには海洋生物の特性である生活史のサイクルの概念がない致命的な欠陥がある。牛などはいったん生まれれば、同じ牧場の中で飼うことができる。
魚やその他の海産生物は、卵は浅瀬の藻場、幼生と言われるときは大型魚類の来ない場所で植物プランクトンなどが発生する光のある浅瀬、少し大きくなれば小型のアミ類を捕食できる場所、大型魚になってはじめて海洋牧場と考えられるような場所に移動しないと増殖できない。

次に、すでに八代海のブリ養殖でなどで明らかになっているように、同じ場所での生簀型養殖は海底のヘドロ化をもたらし、その他の生物の幼生等が生育できない環境にしてしまう。

世界の漁獲高が減少しはじめている現状や八代海の事例は、すでに人の行う漁業が、海の回復力を簡単に超える段階にきていることを証明している。特定魚種だけ海洋牧場に飼う考え方では、生簀に入れる魚だけは生きているが、えさになるその他の海産資源が獲れなくなったり赤潮で魚貝類が激減することも生じる。

これからの海洋牧場技術とは、自走ブイで生簀を囲うのではなく、その海域の水温、栄養塩濃度、海流などの環境条件にふさわしい生命複合体の生活史サイクル全体が過不足なくまわるような漁場環境整備技術となるだろう。

目的魚種の増加を図る手段は、その魚のえさとなるプランクトンや海草、小動物類といった、人間には魅力のない生物達を増やす技術であることを見据える必要がある。

その小さい生き物達はまた、海底や海水中のバクテリアや藻類などに生かされているわけである。海の回復力とはこうした生命が豊かに存在するという条件の上になりたつことなのだ。干拓という名で浅瀬を埋め立てて藻場を壊し、海底を養殖用の餌でヘドロにし、養殖魚の病気を防ぐために薬品を海面に散布するなどといった行為から日本の漁獲が急減してしまう状況に陥っている。海洋牧場をやりたければ、まず海の回復力の容量を大きくすることから着手されなければならない。

この20年ほどの間で、我々は稚魚放流や生簀養殖が全体経済としては効率の悪い漁獲向上策だったことを学んだ。

漁獲を増やしたければ、その魚の餌が増殖できる環境作りと幼稚魚の生育環境保護こそがなすべき策であったことを反省し、受け入れなければならない。

 

バイオマスのメタン発酵による発電が地球温暖化防止策として期待されている。しかしそれは既存の海藻がつくっている沿岸の海中林に手をつけないという条件があることを知らなければならない。すでにある沿岸の海藻に工業規模で手をつけてはいけないのだ。
海藻を養殖するにしても、漁業に影響を与えない養殖海面は、海底が有光層である海面では少ないはずだ。海藻養殖可能海面を初めから、赤潮や青潮が発生する都市の内湾、および有光層より海底が深い外洋と考えて計画すべきである。

海藻原料をメタン発酵するアイデアは沿岸に原料を求めれば海中林を破壊する意味で温暖化を促進する。海藻のメタン発酵だけで解決する夢のような地球温暖化防止策をとると、さらに漁獲の激減によってたんぱく質確保までもができなくなる。

海藻をバイオマスとするなら、外洋で海藻を作らなければならない。このことから、水分の多い海藻を輸送するという不利な条件が加わるため、沖合いでメタン発酵をしてガス体のメタンの輸送保管をするという費用のかかる技術開発が要請されてくる。こうなるとメタン発酵がよいのか、あるいは常温で液体となるほかのエネルギー物質への変換がいいかの選択が出てくる。どこで海藻を確保するかは今後の研究方向を決める重要なことなのである。メタン発酵は既存の技術で何とかなるが、外洋での海藻養殖技術は未着手である。台風で壊れないフロートとロープ栽培技術の研究がメタン発酵研究とセットで進行していなければならない。季節によらず生育する収量性の高い海藻の育種もまた重要な研究となる。

すでに要素技術はかなり完成しつつある。
メタン発酵後の廃液はそのままプランテーションに散布して海藻の肥料になる。また生成したメタンからメタノールを作る技術も京都大学が研究しており、可能性が開けている。気体であるメタンをメタノールにできれば、外洋で生成したメタノールを安価な輸送船で輸送可能となる。メタノールはバイオオイルの原料となりうる。

何も外洋でメタン発酵を行わなくても、海藻を高温高圧の条件で水熱液化することで直接バイオガスと、バイオオイルが得られる。そのほうが輸送保管の費用を大幅に安くできる可能性が高い。投資額と回収できるエネルギーの良好な収支点をさがす研究が必要だ。

大型のコンブであるジャイアントケルプと深層海洋水とを組み合わせれば、年に数回の収穫が可能であることが確認されている。バイオプランテーションを3つほどに分け少しずつ収穫をずらすことで、年間をつうじたバイオオイル製造が可能になる可能性がある。

日本の研究の現状は最終システムにくみ上げる視点の欠如から、個々の要素技術は進展しているのに、いくつかの技術の研究がなされていないことによって実施不可能になっているだけだ。いま必要なのは、総説的な説明ではなく、「外洋でエネルギーを確保する」という国家として取り組むべき方針なのだ。それがあれば研究の集中が起こり、解決は早まる。

こうした技術開発は、巨大な造船技術を持つ経済力の発展した国家がなすべきであるし、そのことで、エネルギー危機が少しでも回避できるのなら、是非取り組むべきであろう。エネルギー生産設備を船またはメガフロートに積載して、外洋に海藻バイオプランテーションを形成すれば、中東オイルに頼らない持続可能なエネルギーを人類は取得できる。

行政は、成功できなかったときの心配から投資をひかえるいまの予算配分方式をあらため、「海洋から国家のエネルギーを獲得する」という方針を決めて動く指導型の予算配分ができないといけない。日本の高度成長時代をもたらす一助となった、以前の通商産業省の官僚の姿勢をとりもどすべきである。これまでのように民間の技術と投資に頼りたいのなら、絶対にあとへは引かない姿勢を見せるべきだろう。少なくとも税制上の配慮を先に決定すべきである。

困難なことに、毎年 海の温度が変化し、海流が変化してゆく時期に我々はこの事業を進めなければならない。地球の気候が平衡しているときなら海で実験したことが再現性があることとして受け入れられる。地球が温暖化し変化ている時期では、海での実規模の実験であっても必ずしも翌年の成功を約束してはくれない。それでも実規模の実験をしないと方向性は見出せず、現状把握の時間ばかりが過ぎてゆく研究のための研究にしかならない。

アメリカが月に人を送り込むという決断をくだした時と同じ勇気が、今の日本の政府に求められている。
もし、現在のように2−3ha程度の実験で海洋開発をやっていますというような及び腰で行っていれば、高価になってゆく大豆と石油代金を払うために安くなったテレビ・車・携帯電話などを作ってゆくことになる。

ブラジルのアマゾン樹林の農地化は個人規模で数10haもの巨大な動きで動いている。中国の次にインドが経済大国として立ち上がり、その後ブラジルが続くだろう。いつまでも逃げているわけにいかないはずだ。

 

 
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  武器ではない力で尊敬されたい

国内に武器を販売して利益を得る集団がいれば、国家は戦争を起こす。武器の優秀さを他国に見せつける必要があるからだ。その行為は絶え間ない憎悪を世界に撒き散らす。

地球の歴史から見ると、産業革命以前は地球上に人類は1億人に満たなかった。文明発生以前の人類はたかだか1000万人程度で推移していたと考えられている。いま地球上に65億人もの人が生活するようになれば、世界中の民族に様々な軋轢が増す。テロとは豊かになった国から見たそのような軋轢の表現である。いま平和的な貢献ができる国家は、国際的に政治的な発言力を高めるはずだ。

何も、産業廃棄物を埋め立てて漁場を形成することだけが進めるべき方法でもない。

例えば、水中に宙吊りの漁場を作るのである。
消波発電機能を持ついかだを係留して水中部分を浮かせた形の漁場を形成する技術でも良い。水面下1000m以上深くても日光が当たる深さに海藻やサンゴが付着した構造体があれば、海洋生命が集まってくるだろう。
海岸のアマモ場や浅瀬の岩礁地帯と同じような産卵や幼魚保護の設備を工夫すれば、それは広い海面を全て漁場に出来るノウハウを取得したことになる。
外海でできるようになれば日本はアメリカが広大な土地を有利に利用して輸出している牛肉のように、広大な海岸線を利用した多量の魚を輸出できる日本のメリットにもなるのである。ここでも海洋温度差発電(OTEC)の技術は設備のメンテナンスのためには必須のものになる。

日本は風美海(ふみかい)の国となることで、継続した繁栄を保てるだろう。他国の沖合いに魚を捕りに行かなくても自国の沿岸で魚をまかなっていきたいものだ。マグロでなくても、タイやメバルが食べられる。

海上都市につながるこのプロジェクトは宇宙開発に匹敵する規模であり、価値を生み出すから間違いなく景気浮揚に役立つ。新事業が日本から生まれ、新たな雇用先が広がる。

 

あるいは持続可能な風力エネルギーや海水温を使って、食糧の増産や台風の発生緩和などの技術を生み出すことも可能だ。

親潮と黒潮が合流する海域は世界で有数の漁場となっている。この理由は親潮側の水温に秘密がある。

表面水にある栄養塩類は日光を受けることで植物プランクトンに摂取され、食物連鎖で魚や人間になって、実際の海の表面には栄養塩は薄い濃度となっている。赤道近くを流れてくる黒潮はこうした貧栄養の海水である。いっぽう、海洋深層水には海の生物にとって大事な栄養塩が多く含まれている。

北の結氷する海域では、海水が凍ることによって、純粋な水で出来た氷と濃縮された海水ができる。濃縮海水は下層の海水より比重が高いために沈んでゆく。栄養塩を含んだ深層海洋水はその代わりに浮上してくる。北の海では深層海洋水が浮上する上下対流のメカニズムを持っているため、南下してくる親潮は栄養塩に富む。

黒潮は温暖な条件を持ち込む。親潮と黒潮が合流する場所は温暖で栄養塩が豊富な場所になる。地球が球形なので北より南のほうが日光の差し込む量が増えるので植物プランクトンが多量に発生する。それが豊かな漁場を育む。

貧栄養である南方の黒潮圏でこのメカニズムが利用できる。深海の栄養塩を浮上させるのに発電をする。深海の低温と表面の海水温度の差を利用して、海洋温度差発電をさせる。この電力を温度の高い表面水と栄養塩の多い深層海洋水の混合と海表面拡散の動力に利用する。
あるいは、浮体型の風車の回転力を電力に変換せず、そのままこうしたポンプの駆動力に伝達してもよいはずだ。波や台風の被害を避けるため黒潮の海流のエネルギーを利用したってよいはずだ。

広い海洋での深層海洋水の利用を考える場合、次のようなことも考えられる。

地球温暖化で炭酸ガスが溶解することにより海水のpHが低下し、炭酸カルシウムでできているサンゴ骨格が溶解してさんご礁が無くなるという仮説がある。日光と栄養塩さえあれば、植物プランクトンや藻類が海水中の炭酸ガスを光合成して消費してしまう。水中の炭酸塩の相平衡の性質からすぐに炭酸水素イオンは炭酸ガスへと変化するから、光の当たる海水表面では温暖化によるpHの低下程度は緩和される。

深層海洋水のpHが低めであっても、植物プランクトンと日光のおかげで、部分的な海域でpHの低下の少ない、やや温度の低い海水を供給できる。カルシウム塩の海水飽和度と環礁の役割などの研究とあわせて、深層海洋水の利用については、サンゴ礁の保護にはとても大事な研究領域である。

したがって、設置場所と規模の問題はもっと多くの研究が必要だ。 小規模であれば、どこでも可能である。しかし海水表面温度が変わる程度までに巨大化した計画なら配慮が必要だ。

海水表面温度が高いフィリピンや台湾などの海域では上昇気流が生じ、他方でチリ沖では深海の湧昇流で海水表面温度が低く下降気流がおきやすくなっている。このために、赤道近辺では東風の貿易風、少し緯度が上がると偏西風が吹く。この風は黒潮の駆動力でもある。

あまり温度を下げると、貿易風と偏西風の強さなどに影響するはずだし、黒潮の強さをも変えてしまうだろう。しかし見方を変えれば、地球温暖化で海面温度上昇させていた海域の温度を管理して下げれば、台風の発生頻度や極端な風水害を抑止できる力になるかもしれない。漁場創生と温暖化抑止力とを同時に入手できるかもしれない。

 
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  廃棄先の確保責任

日本の産業廃棄物は、建設業からの廃棄物を含めて約4億トンにもなる。

行政は建設リサイクル法(資源有効利用促進法)を設定して、取り締まりの枠だけは出来た。しかし、実体としてまだリサイクルできない廃棄物が出ているのだから、どこかの谷や、海に不法投棄されてしまう。今後とも排出とリサイクルの量がぴったり一致するのは夢のまた夢であろう。
いずれは海が汚染を引き受けることになる。それよりは、管理された中で埋立できる最終処分地を確保する方がはるかに良いはずだ。

バブルの時代から、日本ではフリーハンドで食料が購入できるという前提で農地を無計画に宅地にしてきた。
団塊世代が建てた古い家屋を区画整理して再び農地を生み出す時代に入る。
都市でも平屋をまとめて集合住宅を作り緑の空間を作る動きが出てきている。

過去の無計画な土地利用を改めようとすると、建築の廃棄物はもっと増えてゆくのである。

光が届かないために生産性が低い海面に漁場を形成するために都市廃棄物を基盤材として光の届く海底を創造するこの方法は最終処分地の容積に制限が少ない優れたやり方である。そしてこのようなことをやれるのは行政しかない。

本来、水産生物の再生産を果たしている「埋め立ててはいけない場所」を、埋め立てやすいから安易に埋め立て許可してきた行政に最初の責任がある。

行政企画段階でも、地球温暖化に前向きであるということを言う行政が、サンゴ礁、アマモ場や藻場である海中林を「浅瀬で埋め立て費用が安いから」という理由で海面埋め立てを許可・推進している現状は、行政の行動に自己矛盾が生じている。行政はこうした漁業の持続的発展を守る立場のはずだから反対するのがスジであろう。

異常に栄養塩が蓄積してしまった巨大都市の内湾を再生するには、酸素を供給してくれる海藻、海草、植物プランクトンと動物プランクトンのコラボレーションなどの環境を整えないで解決するわけがない。エネルギーを使わない海の再生が求められている。
単純に「エアレーターをとりつければいいさ」というような、範囲を限定した経済性から考える工学的思想こそ地球温暖化をもたらした原因だ。

大阪湾では水深7〜5mの海藻が生育可能な海域を埋め立てて干潟を作った。経済的に埋立てしやすい場所を埋めたてる海底破壊を行ったうえ、環境にいいことをしたと主張している。なぜ水深50m以上深い所でやらないのだろうか?

ミチゲーションの意味を知らず、「干潟作り=環境に良い」という工学的思想であって、結果としてはやはり環境より経済なのである。大阪湾のばあい、この工事を推進するときには、干潟に隣接させて失われた水深7〜5mの岩場と、同じくアマモ場、淡水流入源などを設置してはじめて「環境に配慮しました」と胸をはって言えるはず。藻場になる場所を壊して干潟を作ったからといって、環境破壊したことにはかわりがない。

港湾整備ででてくる浚渫土の経済的な処理のために環境を守る「干潟づくり」としてカモフラージュしたと言われても仕方のない行為である。行政は本来のミチゲーションの思想がもたらす経済効果にもっと敏感になって欲しい。少なくとも漁獲の向上を犠牲にした決定であったことは確かだ。
このようなまやかしをすればするほどせっかくの浚渫土を分解プラスチックでおおって干潟にする技術を開発した企業が悪者になってしまう。技術が悪いのではなくこのような決定が悪いのだ。

行政は埋立地の確保から逃げてはいけない立場である。企業が担当するリサイクル・リユースと共に、行政は汚染を防ぎかつ再利用できる埋め立て提案を国民にしてゆくこともその任務である。新産業が今後出現するという前提ではできもしない完全リサイクル提案だけでは今後も不法投棄は継続する。

企業の人々が考えることはいまだに、「浚渫土の外洋投棄」という言葉である。外洋とはいっても、水深50mを越えるあたりでしか考えていない。このあたりの海底は、光こそ届かないけれど、いろいろな魚種の仔魚や、稚魚が外敵を避けて成長する場ともなっている。ここに投棄すれば魚の種類が激減する。「投棄」ではなく、やはり計画的に漁場を形成する視点で計画されることでなければならない。もう海洋は無尽ではなく、4000mの深海もふくめて、どの海域でもミチゲーションの視点を持たない行為はゆるされないのだ。

廃棄物処分場の確保が無ければ、確実に不法投棄と汚染が日本中の山野に拡散して、違法者という名の人々を増やし、暴力団に資金が集中する。

メガフロートは空港だけの必要性から推進されている。メガフロートは日光をさえぎるという意味で、漁業に大きな影響を与える。
数百m規模の小規模のメガフロート実験では、太陽が東から西に動けば多少の光はあたるから、海面下の生物には大きな影響は出ないだろう。しかし、数kmの規模のメガフロートが常設されれば全く光のあたらないゾーンが海底に出来てしまう。山の森を黒い布で覆うようなものだ。実用規模のメガフロートは水深が50Mを越す沖合いに設置されなければならない。外洋型のメガフロート開発を優先すべきである。

外洋型のメガフロートを空港にするとしても、消波機能や発電機能をもつ設備をメガフロート周囲に設備しておくことになる。こうした設備開発に工学的な視点だけでなく、人工の藻場となりうる形状のものを選択する視点で開発研究をすれば、空港周辺にカツオやマグロが寄ってくるのである。
「空港設置で地域活性化」という錦の旗を掲げても漁民の生活を脅かすという意味で、国策で押し切ることは許されない。国策だからこそ、全国展開の障害にならないように地元の協力のもとですすめられるべきであって、多数決で個人の生活を無視したというイメージを持たせる運営は避けるべきである。

 
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  風美海の国とは

風美海(ふみかい)の国とは造語である。日本は山も海も風も美しい国であって欲しいという願いを込めた造語である。そしてその中に住む人もまたやさしい人々であって欲しいと願う。

日本には平坦な土地は少ないが、その代わり、外洋は有り余るほどある。外洋を制覇する技術は、平和利用の点でも軍事戦略的にも強い国家を作る基盤となるだろう。
大きな土地を持った国には、海を制覇する必要性はないのだから、このような海洋利用技術には興味を示さないはずだ。日本はこの分野で圧倒的なリードを保てる有利な条件にある。

製造業で世界をリードしてきた日本。その力と漁業技術とをつないで新しい分野でリードしてゆこうではないか。

埋め立てをすれば既存の生態系が乱れる。海流も変わる。希少生物も保護される必要がある。しかし何もしなくても地球温暖化は容赦なく既存の生態系を壊していっている。サンゴ礁が白化で消えているのがその良い例である。ほとんどの生態系がそこから消えていっている。

地球温暖化は地球が満遍なく暖かくなることとは違う。年間の平均気温は高くなっても、北側の冬はより寒く、赤道よりの夏はより暑く広域になり、台風や風水害の規模が拡大することを意味している。

地球はすでに新しい気候や海洋環境の中で、最適な生態系に向かって変化しているのである。
多くの海洋生命が、地球温暖化による海洋環境の変化にともなって、既存の環境から新しい住みやすい環境へ向かって移動を開始し始めている。

温帯に位置する日本での漁場づくりはこうした南北の海洋生物の避難場所を準備してやる行為である。それは地球全体の生命を守る行為でもあるだろう。
里山が人の手によって生態系を維持してきたように海もまた人手によって維持される生態系がある。現代の科学は海流変化のシミュレーションなど可能にしてきた。学者と漁民が結束すればよい。

いま日本国内では磯焼けとして知られる海中林の喪失をなんとか過去の状態に戻そうと努力している。 しかしもし地球温暖化の進展が予想より早ければ、藻場を作るよりさんご礁の育成へとハンドルを切り替えることも視野に入れなければならない。地球温暖化の事態への認識と対応への心構えが行政段階ではまだあまいようだ。 あと数十年先と考えるか、あと3年先と考えるかでずいぶん変わるはずだ。

海洋に漁場を作るのは、湖にブラックバスを放流する行動とは違う。むしろ新しい湖を作ろうとしていることに匹敵する。
日本人は農業において旱魃を防ぐために多くの溜池を作った。現代では宅地利用のために溜池が減少し環境保護運動がうまれている。
埋め立てで漁場を作るというテーマは、先人が溜池を作ったときに環境破壊したかどうかを問うテーマとおなじである。そして同時に日本の山野や河川を保護しようとしている面にも眼を向ける必要がある。

日本人の祖先は水田による稲作という自然共存型の食糧生産の方式を選択してきた。それによって世界に誇れる山紫水明の国を作り上げてきた。

敗戦後、日本はアメリカ型のやりかたで他国の資源をむさぼりながら国内までも無秩序な開発を行ってきた。日本だけでなく人類は競って地球資源の元手にまで手をつけて相手を出し抜こうとしている。「地球が現在生産している自然資源」と「人類の消費した自然資源」のバランスでは、人類は年に約20%だけ元手に手を出している計算になる(世界資源保護基金WWFが2004年に発表)。漁業資源は農業のように人間の手で再生産しているわけではないから、獲りすぎは毎年母数の減少をもたらし急速な資源枯渇をまねく恐れがある。
食糧を他国依存している現状では、光がとどく既存の漁場や浅瀬を埋め立てる計画が禁止されることはもちろん、早急な光の届く漁場をつくりだすことが求められ始めている。

私達は次世代のために、もう一度祖先と同じように、生存のための選択をする時期にある。日本経済はすでに徳川幕府の時代のような自国内の閉鎖的な自給自足経済が維持できる規模ではなくなっている。

文明維持のためには他国と友好を図りながら、食糧や資源を自給できる範囲を増やしてゆく方向を取らざるを得ない。世界の人口問題や、地球温暖化の問題は敗戦後の勝ちパターンが通用しなくしている巨大な変化である。日本の中の小さい範囲での利害関係を簡単に壊すほどの巨大な問題に直面している。

海を再生する提案を行う団体も増えてきたが、一つ気になることはメガフロートを推進する業界と水工土木の業界とが手を握った提案にしてくれていないことである。地球の人口問題から考えて、 30 年以内にいくつかの創生漁場が出来上がっている必要があるから、あまり時間がない。過去のいきさつを捨て、日本の将来を切り開くために、共に協力していただくことを願っている。
海上部分の施設再利用を考えれば、浮体であることのメリットは大きい。メガフロート上の土木建築工事は新しい事業分野として有望なはず。海上建築物はただでさえ老朽化した海上の石油開発施設の処理に困っているくらいだから。

 
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  考えたくない未来のシナリオ

人々が経済性という呪術に振り回されて、いまこの温暖化の進行を緩やかにできなければどうなるのだろうか。

まだ温暖化の影響は途上であって、国家が正常な機能をはたせているときに生じるうねりがある。「人の力では温暖化を止められなくなった」と諦めの気分が世界に蔓延するようになってしまった近い将来の時代のことである。

温暖化の影響が目に見えてくるようになる時期には、多くの場所で干ばつと多雨による食糧減産が生じてくる。巨大な人口を有する国々は、食糧の確保と暴動の抑止を行わなければならなくなる。軍が官を取り込み民を支配する野望を持つこととなる。軍が権力を維持し、民の支持を受けるには、他国の富を奪うことがもっとも(本人達にとって)合理的な解決手段となる。その場所は温帯の一部の地域であろう。

過去のグローバリゼーションで資本を異常にためこんだ一部のセレブ達も、気候変化とともに生じる金融不安や収入の途絶と先行きの不安に見舞われる。そのとき国家の軍を動かせる権力をもっている世界のセレブ達は、人類が積み上げてきた民主、人権、国家間のテリトリーやルールなどを無視して、その場所の確保を目的にして、資金的に背後から侵略者達を支援するだろう。

正義に反する行動だから当然、自分達の生存に必要な奉仕をする能力のある人民だけをその土地の中に入れ、後は銃で入れないように排除するだろう。通常は、人民同士の行うジェノサイドを黙認する形で紛争が進行する。だが世界中が温暖化で変化して価値を生み出す基盤が地盤沈下しているから、まもなく物流の途絶と、資源の囲い込みから、世界の生産力は速いペースで壊滅してゆく。エネルギー資源や鉄、レアメタル、シリコン、食糧、機械などはどんどん入手できなくなるだろう。

権力が富の確保のために、機械の代わりを求めて行うことはひとつ。人間を生産機械として使うこととなる。排除され、ようやく周辺で生きのびていた人々を人間狩りして奴隷として使い捨てる策に出るしか方法がなくなる。

人類は、歴史の中で他の人々を奴隷として使役してきた期間が圧倒的に長い。人類文明の発祥の時代から、富の蓄積のためにあたりまえに行われていたことである。そして、飢えていなくてもつい最近まで欧州列強国が金儲けのために植民地時代で行ってきたことである。

日本で明治維新がおこるきっかけになったのは、欧州各国がすすめていた植民地化への危機感からだ。明治の男達はうまく日本を守ってくれた。大正時代の軍事官僚は中国の植民地化を目指して国家を壊した。そして敗戦後の昭和の男達は焼け跡のゼロから世界第2の経済国家にまで日本を再建した。

いま有事の事が起きているのか、平和時のことがおきているかを見極める能力が日本人に求められている。今からの平成の男達が温暖化がもたらす巨大な変化にどう対応できるだろうか?

攻撃の矛先が弱い相手に向かってゆくことは、大自然の掟である。しかし我々がどんなに「あなた達を同じ人間として認めていますよ」と本当に信じていても、食糧を失いかけている相手にとって、我々個人がどの価値観を持とうが関係なく、言葉で理解した「むしりとれる日本人」として攻撃する対象でしかない。

生活基盤を奪われないためには、今何を注目し、何を国家の施策としてやるべきかに声をあげる勇気がいる。今の時点での不法な侵略に対して断固立ち上がれる覚悟と気構えが必要だ。不法な侵略に対して反撃できる体力は鍛える準備期間がないと身につかない。戦える強さでもいいし、人並みはずれて早く逃げる能力でも良い。生きのびてゆく力を身につけておかなければならない。
相手が侵略する意図を持たない程度の体力があれば、無意味な紛争に巻き込まれることが少なくなるだろう。日本にとって海洋開発力はそういう意味を持つ。

どのような時代や環境であっても、広く世界の人々を愛する気持ちこそ、希望の原点である。同時に、自分達が飢えていても、自分達の食糧を半分にして相手に分かち与える人間としての判断が残っていれば、そういう人々とも協力して生存してゆける方法も見つかるはずだ。

いま世界では、生産する価値の何倍もの金がマネーゲームに流れている。各国の政策を決定しているセレブ達が自分達だけは海上都市を作って生きのびられると考えたら間違いだ。汗して働く人間がいないでどうやって暮らすというのだろう。

機械類は10年単位でメンテナンスしなければ動かなくなる。地上のあらゆる産業を海上都市の中に詰め込もうとすれば、多くの人間を送り込むことになり、狭いメガフロートに積載できるものではない。地上でも同じことだ。多くの教育された人間を必要とする社会は巨大な変化には弱い。人を切り捨てれば、それは自分達の足元を崩していることだ。

60億人が積載できるギガフロートができたからといって、食糧を確保する農地をどうやってのせるのだ。幼魚のゆりかごである沿岸整備を放棄し、オキアミだけ食べて生きてゆくほうを選ぶのだろうか。

海上であろうが、気候変動であろうが新しい生活環境に入れば、衣食住すべての面で新しい産業を生み出していかなければならない。人を切り捨てれば、それをセレブ自身で手を汚し、研究し製造してゆかなければならない。早く気づいたほうが良い。マネーゲームの金は、いま温暖化防止と国民保護の投資に回すことが必要だ。海の技術を高め、一致団結して生きのびるしかない。

地球温暖化で最も恐怖であることは、台風や海水面上昇、干ばつなどよりも人間が食料と資源を求めて、殺し合いを始めるということである。類人猿の持つ暗い性質である。

現在アフリカで生じているこうした闘争は、中国とインドという巨大な人口を抱えたアジアでひとたび起これば最も激しく制御のきかないものになるだろう。

現代人の価値観の比較をしてみよう。

日本人の価値観は「たとえ力をもっていても他人の財産を奪うことはあってはならない」である。
闘争地域のアフリカ人の価値観は「力をもっていてその力を他人の財産をうばうことに使えないものは馬鹿だ」である。
そのため、アフリカでは植民地時代に白人のつくった農場はうばわれ、治世している者の親戚縁者に配分される。当初は白人が対象でも一度そのようなことが行われると隣人の黒人の土地もまた所有者が弱いという理由で奪われてしまう。復讐を恐れ、ジェノサイドも同時に行われる。理由は後づけでなんとでも正当化される。

きっと、日本の戦国時代の国捕り物語の勇者の倫理観も似たようなものであったろう。そのような社会では、大名がいかに理不尽であっても、当面の生命財産を守ってくれるのであれば、人々は強い大名を支持する。

自分達に失敗はないとする責任回避の官僚が支配する国は、こうしたルール外の行動には弱い。官僚の首をすげ替える力のある大統領制度は乱世には強いはずである。日本の政治を守っている者たちの現状はあまりに来るべき時代には知的にも覚悟的にも弱い者達である。

地球温暖化対策とは、経済性と人間がどうつきあうか地球規模での模索の開始である。「人を殺してはいけない」と同じくらい強い「奪いすぎてはいけない」という価値観をどのように社会に取り込んでゆけるかの戦いである。それは奪いすぎている者たちとの戦いでもある。

END  

風美海プロジェクト
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