MSX同人ソフト紹介(6/14)
M改
東北の一人サークル(後に上京)。当初は「MSX-KAI PROJECT」と表記されていたが、略して「M改」になったようだ。
MSXでは4作発表されており、うちシューティングゲーム2作の完成度は群を抜いていた。派手でテンポのよい演出と、ゲームバランスの良さからファンが多かった。また、隠し要素の多さや、過去のシューティングゲームへの膨大なオマージュなど、分かる人には分かるマニアックな一面も持っていた。
「Izumic Ballade」「完全攻略キョクゲン」はプログラムから音楽まで全て一人で製作していたという。「PLEASURE HEARTS」のみ音楽を他の人が作っているが、凄いバイタリティであった。MSX以後はWonderWitchで作品を発表している。
Izumic Ballade
1996年4月16日・2DD×1・600円・/
「イズミックバラード」と読む。いわゆるRPGだが、戦闘シーンのみちょっとしたアクション要素がある。TAKERUで唯一リリースされたM改作品でもある。
ブラスバンド部に入った主人公イズミが、マイナー極まるバス・クラリネットの担当となるところから始まる…のだが、その後のストーリーがかなり意味不明である。最後は巨大ロボと戦ったり、ひきこもりのコタツに入った作者自身と戦うハメになる。かなり頑張ったのだが、この作者に勝てなかった。マップ中に配置された「せんりつ」の取り逃しがあると、ほとんど勝てないバランスになってしまうようだ。技術的にはかなり頑張って作られているものの、他の作品に比べると評価はだいぶ低い。
次回作「完全攻略キョクゲン」のデモが入っており、そちらだけを目当てに買う人もいた。
完全攻略キョクゲン
1997年11月23日・2DD×2・/
発売当時MSX界の話題をさらったシューティングゲーム。開発に2年3ヶ月をかけたという大作である。
12種類(隠しを含めると16種類)の機体で全8ステージを戦う「ADVENTURE」モードと、機体固定でスコアアタックを行う「2分モード」「5分モード」を持つ。そのことからも分かるようにハドソンキャラバンシューティングの影響を受けてはいるが、それだけではない過去の膨大なシューティングゲームへ随所でオマージュを捧げた演出が入っている。
静止画だとグラフィックが少し見づらいが、動いている状態では問題ないレベル。ある程度の暗記やパターン化は要求されるが、全体のバランスはよく練られており、16種類の機体と7段階の難易度の全ての組み合わせできちんとクリアできる。
このゲームは同人ソフトとしては珍しくプロテクトがかかっているのだが、一部のMSX2/2+で誤検知するバグがあった。そのため、「三陸王者#0」にはプロテクトを解除するパッチが収録されている。
三陸王者#0
1998年・2DD×1・/
「完全攻略キョクゲン」のディスク3という体裁で発売された、「特別発行ディスクマガジン」。内容は開発記や修正パッチ、BGMモードなど。タイトルは作者が宮城の出身だからだろうか。
面白いのは、この中のシューティングゲーム(右画面)で点を稼いで、BGMやCPUモードを「購入」しないと、設定が選べないことだろう。最初は無音で、まずPSG、次にFM音源というふうにグレードアップしていく。点数はセーブできるので、時間をかけてじっくりと中身を見ていく必要がある。
PLEASURE HEARTS
1999年11月21日・2DD×1・/
「プレジャーハーツ」と読む。「キョクゲン」は縦だったが、今度は横スクロールのシューティングゲーム。MSX2だと通常は難しい横スクロールを、スクリーン4+画面位置補正機能を使って実現している。この手法そのものは「スペースマンボウ(コナミ・1989年)」などでおなじみだが、本作ではパターン書換も併用して奥行きとスピード感のある表現に成功している。
グラフィック、特にスプライトが見やすくなった他、演出面がかなり強化されている。テンポの良さは相変わらずで、よくこれだけ思いついたものと感心する他ない。特に終盤のボスラッシュに投入されたアイデアの量は驚くばかりである。機体が選べないことからボリュームとしては「キョクゲン」より少なくなったが、単品のゲームとしては十分だろう。
このゲームは同時に発売された同人ハードである「+PCM」に対応していて、繋がっていると一部の効果音がPCMになって臨場感が増す…のだが、MSXのプリンタポートに基板が剥き出しの+PCMを接続し、さらに電源を接続した上にミキシングを別途行わなければならなかったため、非常に面倒であった。
NEBULAR-SOFT
「魔法使いコッピー・プレアデスの異変」を製作したサークル。「魔法使いコッピー」はもともとMSX・FANに掲載された投稿作品で、「プレアデスの異変」はそのグレードアップ版とも言うべき内容である。ボリュームの関係からかTAKERUでのリリースとなった。
魔法使いコッピー・プレアデスの異変
1995年2月14日・2DD×1・1000円・/
横スクロールシューティングゲームで、システム的には「グラディウス」のパワーアップを踏襲している。マップ内の敵も「グラディウスII」のカニロボットや、「III」の回転レーザーなどのアイデアを拝借している。今だとこういう行為はいささか表に出しづらいのだが、この当時に非力なMSXで実現するには(見た目を似せずに)エッセンスだけ取り出すような工夫が必要だったため、オリジナリティとして認められていたことは書いておく必要があると思う(X68000あたりの高性能な機械だと、なまじ似せられてしまうためにアングラになりがちだった)。
完成度は高いのだが、敵の速度が速すぎて難易度が非常に高い。MSX2でも手こずるのにturboRの高速モードだとさらに難しくなる。自機のスピードが復活直後は極端に遅いので、一度死ぬと復活はかなり辛い。それでも、コンティニューを繰り返せばなんとかクリアできる程度となっている。また、ラスボスの倒し方でエンディングが2種類に分岐する。
音楽をFRIEVEが担当している。MSXでは(作品の規模が小さいこともあって)サークル間で協力するのは珍しいのだが、音楽を作れなかったので頼んで作ってもらったそうだ。
Action Game Set
1995年9月13日・2DD×1・500円・
ミニゲーム集。「伝言板」を読むと、上の「魔法使いコッピーVer2.0」のパッチファイルと共に、これまで作りためたゲームを収録した…というようなことが書いてある。
ミサイル○マンド風「L−FIGHT2」、ブロック崩し「5BALL」、逃げまくりゲーム「Cat’s村のぷきーち君」など。内容は、まあそれなり、というところ。
NGDプロジェクト
NGDとは「Networker's Gift Disk」の略である。この場合のネットワーカーというのは、パソコン通信をしていた人たちのことを差す。MSXでは早い時期から便利なフリーソフトが公開されていたものの、当時のパソコン通信はかなり費用のかかる行為であったのと、MSXはあまり通信に向いていない面もあって、フリーソフトを入手できない人も多かった。そのため、フリーソフトをまとめて発売することに大きな意義があったのである。そうした中でNGDは「フリーソフトウェア100選」と並んで2大ブランドであった。
Networker's Gift Disk(#1〜#4)
1994年?(NGD)・2DD×3
1995年2月16日(NGD#2)・2DD×3・800円
1995年9月11日(NGD#3)・2DD×6・1500円
1996年9月17日(NGD#4)・2DD×8(TOOLとARTで各4枚)・各1100円
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4号まとめての紹介。NGDはフリーソフトウェア集のため、内容のほとんどは圧縮ファイルとなっていて、一般のディスクマガジンのようにメニュー画面などはなく、Webで紹介に適したものが少ない。とりあえずタイトルCG4枚だけ掲載する。最後になった#4はディスク枚数の増加から「NGD#4-TOOL」「NGD#4-ART」の2つに分けて売られた。
当時聞いたところでは、価格をかなり安く設定していたためにTAKERUの事務局からは価格を上げて欲しいと言われたことがあったそうだ。今思えば、TAKERU事業全体において利益が出なくて苦しかったのだろう。
NUT研究所
MSX・FANに「ルミエール」というクイズゲームの体験版が掲載されたことがあった。「ルミエール」はturboR専用で、当時本体を持っていなかったために買い逃している。体験版を後で遊んだら結構デキが良かっただけに残念。
Fighting Spirits
1994年・2DD×1・
あらかじめパラメータを設定したキャラクター同士を戦わせるゲーム。できるのはパラメータのエディットのみで、戦闘は自動で行われる。顔グラフィックの色が部分的に変なのは、自分のターンに限ってパレットが設定されるため。サラっと作った感じで別段面白くは感じないが、恐らく作者の友人の間では流行ったのであろう、プリセットのキャラクターの数が異様に多い。
OFFICE PASTA
ディスクステーションの常連投稿者の方が作ったサークル。下の「インディアンクエト」は「ODS」をリリースしていた人たちと一緒に作ったソフトのようである。「ODS」の初期に連載された「インド人クエスト」のリファイン版である「インディアンクエスト1−2−3’」がMSXにおける代表作。後年はPC-9801でソフトをリリースしていた。
インディアンクエスト1−2−3’
1993年2月22日・2DD×1・500円・
会社でイジメにあっている女性のインド人「アッカド」が、インドの神「ダルル・ジャナ」の力を借りてパワーアップするが、会社に行ってみるとなぜか次々と社員が襲ってくる!という、改めて文章にすると全くワケのわからないストーリーのアドベンチャーゲーム。画面構成や展開は「魔導師ラルバ」に強く影響を受けているが、ストーリーが凄い勢いで進むので「ラルバ」が自称していた「ジェットコースターADV」という名によりふさわしい内容であろう。最後のほうは巨大ロボに乗って社長のロボと戦う、さらにムチャクチャな展開になる。
アニメーションはキビキビと動くし、音楽と画面のシンクロが良くて大変面白い。当然アッという間に終わってしまうが、今やってもウケる素晴らしい完成度である。
「ODS」#1〜#3に連載されたの「インド人クエスト」と基本ストーリーは同じだが、演出やCG、音楽などがほとんど作り直されている。
この後ODSでは同じシステムのADV「マッチ売りの少女・拳」が連載されたものの、こちらは4話まで製作されたところでODSが休刊し、残念ながら未完となってしまった。「拳」は「MSX同人WORLD」シリーズに再録されている。
ONION software
PC-8801/9801及びWindows(3.1〜Vista)で、現在に至るまで20年以上も活動している同人サークル。言語「Hot Soup Processor(HSP)」の開発元としても名高く、市販ソフトの開発実績も多い。
同人だけであまりにも多数の作品があるが、MSX2では「玉ネギとりゲェム」のたった一作だけがリリースされている。
他にMSX2版「シェナンドラゴン」(1990年、徳間書店)の開発にも携わったようであるが、このサークルの経歴からするとMSXとの関わりは極めて薄い。なぜにこんなゲームを出したのか、サッパリ分からないのであった。
玉ネギとりゲェム
1989年3月?・2DD×1・
実写取り込みのキュー○ー人形を動かして、空から降ってくる玉ネギを手でキャッチするゲーム。画面ではニンニクみたいに見えるが…。
手のひらの部分にしか当たり判定がなく、意外と難しい。一定数の玉ネギが落ちると、キャッチ率でクリアかどうかが決まる。
クリアすると淡白な絵柄の女の子(タイトル画面の絵に近い)が出てくるという、ただそれだけの内容。
BGMもないし、面白いかどうか以前にひたすら単調である。申し訳程度のストーリーはついているが、投げやりなのでどうでもよい。
ちなみに全面クリアするとスタッフロールが出てきて、そこには「宇宙牧師外伝/玉葱取りゲーム」と書かれている。誰なんだ、宇宙牧師。
OSTS
別名「森永ラボ」。フロッピーディスク18枚組で4000円、という暴力的物量を誇るMSXturboR専用の恋愛シミュレーションゲーム「緑光の樹」をリリースしたことで知られる。
近年までWindowsで作品を発表していた。「緑光の樹2」が予定されていたが、発売されたかどうか分からない。
OSTS7周年記念DISK
1997年・2DD×1・
唯一手元にあるソフト。「民衆1万人大虐殺ゲーム・プノンペン」(画面右)と、「SAKIBAS」(画面左)の予告編からなる。
「プノンペン」は戦車で人を轢き殺しまくるゲーム。設定からして、天安門事件と勘違いしているような気がする。
緑光の樹
1996年・2DD×18・4000円・
「りょくこうのき」と読む恋愛シミュレーションゲーム。マップ移動で行き先を指定するアドベンチャー形式を取っている。
とにかくフロッピーディスク枚数が多く、18枚は市販・同人ソフト合わせても最大である。(市販で一番多いのは「ドラゴンナイトII」の9枚)
価格も4000円と当リスト最高である。
しかし困ったことにバグが多く、最後まで遊べなかったという話をよく聞いた。またディスク枚数が多いのも同じデータが複数のディスクに入っているためらしく、18枚分のボリュームと言えるかどうかは微妙なところ。BGMがないのも寂しい。
一度腰を据えて遊んでみたいが…。
Pallete EnterPrise
「素人M(しろうとえむ)」さんのCG集を出したサークル。サークルとしては現在も続いているようだが、今は代表者も当時と替わっているようだ。MSXではこの1本のみ確認している。
AmaturisM
1996年・2DD×1・/
「アマチュアリズム」と読む。主にNVマガジン(現:NV)に投稿されたCGを集めたもので、作者コメントと共に見ることができる。メニューもついていて、FM音源のBGMが流れる。MSX・FANとNVマガジンに掲載された作品が主体。
次回予告としてタイトルが上がっている「SexarisM」は発売されなかった。
PARTY COLOR
サスペンスアドベンチャー「殺さないで」をリリースしたサークル。
このサークルは後にTAKERUで市販ソフト扱いで発売された「涙のキャンバス」を制作している。
さらにその後「BE-BOP BOUT」を製作した「MAR'Z PROJECT」になり、「ANIMECHA」シリーズを製作した「TEMPEST」と改名していったと思われる。
殺さないで
1992年?・2DD×1・600円・
主人公「幸子」がやたらと命を狙われる、サスペンスアドベンチャーゲーム。
即売会でしか売られなかったため出回りは悪かったものの、シナリオや演出に凝っていて面白い。
発売時期が古いこともあり、現在は多少のプレミアがついている。
クリアすると次回作「涙のキャンバス」の予告編と、なぜか「イース」の曲のコピーが聴ける。
PASTEL HOPE
山口県の一人サークルで、ソフトベンダーTAKERUを通じて多数のパズルゲームを製作・発表していた。BGMを除いてオールBASICで作られているが、明るいBGMやグラフィック、丁寧な作りでよく知られていた。後にX68000に「PASTEL SPIRITS」というサークルが移植していたが、これは許諾を出して別の人が移植したもの。
ほいっぷる
1992年8月6日・2DD×1・800円・/
PASTEL HOPEのデビュー作。このソフトはBGMも含めてオールBASICで作られていてMSX2だと大変遅いが、のんびりした内容なのであまり違和感なく遊べる。
自分の2個1組のブロックを上に向けて押し出し、横のラインに同じ柄を3個以上並べる(隣り合っていなくてもよい)と消える…というのを規定数繰り返すとクリアできる。縦に並べさえしなければどうにかなるので、パズルとしての難易度はかなり低めである。
マニュアルには面ごとに「グルメ?なCG」が出てくるとあるので、クリアすると出てくるのが右の画面。確かに、おいしそうだ(笑)。
1面はコーンスープだが、面ごとにだんだん豪華になっていく。内容と何の関係もないのだが、やたらと綺麗に描かれているせいか、単調なゲームなのに先が見たくてたまらなくなる魔性の作品であった。確か最後は伊勢海老が出てきたはずだ。
ぽよぽよ らいふ
1992年8月6日・2DD×1・/
「ほいっぷる」と同時に発売された、4人同時プレイのテーブルゲーム。1人で遊ぶ場合も、CPUが残りの分を担当する。
自分の色の「ぽよぽよ」をターンごとに一つ左右または上下に分裂させ、最後に残った数を競うのが主なルール。
分裂した際に既に「ぽよぽよ」があると、自分のも含めて消えてしまう。また分裂した先に連続していると、色を問わず全て消える。
終盤にひしめきあった「ぽよぽよ」が消し合いの結果どう残るかの予測はなかなか難しい。
ぽよぽよ らいふ2
1992年11月13日・2DD×1・/
前作と基本的なルールは同じだが、5ステージのゲーム中に取得した「コイン」の数で勝敗が決まる点が最大の違い。
ラウンド終了ごとに「ぽよぽよ」を繁殖させた数に応じて「コイン」がプラスされるが、ゲーム中にも取得が可能となっている。
繁殖よりも、アイテムの入った「?BOX」の奪い合いが勝敗の主軸になる。
HAMARAJA NIGHT
1994年4月12日・2DD×1・/
「ハマラジャ ナイト」と読む。ディスコ「HAMARAJA NIGHT」でギャルをうまく並べて「シャウト」で昇天させると点が入り、規定数のギャルを昇天させるとステージクリア。全6ステージ。
PASTEL HOPEとしてはやや異色な、先を読む力を要求される作品。ギャルが増えると移動範囲も限定されてしまうので、うまく誘導しないとクリアそのものがおぼつかなくなる。
魔法の国のほいっぷる
1996年1月22日・2DD×1・1500円・
turboR専用でリメイクされた「ほいっぷる」。ルールは同じだが、6人のキャラクターとのCPU対戦もできる。敵より速く消すことで相手にペナルティを課すことができるのは、この手のゲームのお約束である。
敵が弱いのと、元のルールが本質的に簡単すぎるきらいがあったため、対戦の形にそれほど意味が無かったように思う。
ぽよぽよ らいふ3
1996年2月29日・2DD×1・/
「ぽよぽよ らいふ」シリーズ最終作。4人対戦の基本システムを継承しつつ、「2」で追加されたアイテムの種類がさらに増えた。
特にキノコを取った際に出せる「でかぽよ」が印象的。その他、一列分に一気に分裂する「キャンディ」が結構出るため、盤面の変化がより大きく感じられる。
PCCM
一時期(〜1995年始め頃?)まで関東で結構なメンバーが揃っていたサークル。ある時突然分解してしまったサークルなので活動の実体がいまいちよく分からないが、もともとメンバーは個別に活動していて、会報(冊子の形式で、15号程度あった)にお互いに向けて発表する形態を取っていたようだ。そのため、サークルとして解散した後もそれほど混乱は見られなかった。
PCCM DISK GALLERY vol.1
1994年・2DD×1・
PCCM会報のディスク版という位置づけのソフト。ディスクマガジン形式ではあるが、主にメンバーがパソコン通信で発表していたソフトの再編集といった感じ。
いま一つコレという売りがない。画面右の「Dynamania」のBGMが妙に耳に残る。